おかあさん どーこ の商品レビュー
ここのところ、いつもの図書館の絵本の特設コーナーは、ずっと家族をテーマにしたものとなっており、最初の頃は母の日メインで、お母さんとおばあさんのそれが中心だったのが、今では父の日が近いということで、お父さんとお母さんが半々といったバランスに変わり、母の日は過ぎてしまったものの、そ...
ここのところ、いつもの図書館の絵本の特設コーナーは、ずっと家族をテーマにしたものとなっており、最初の頃は母の日メインで、お母さんとおばあさんのそれが中心だったのが、今では父の日が近いということで、お父さんとお母さんが半々といったバランスに変わり、母の日は過ぎてしまったものの、それでもお母さんの絵本が残っているのを見ると何だか気になってしまい、このまま棚に戻る前に読んでみようと思った次第であり、「えっ、今更?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、何冊か借りてきました。 本書の原題は「MOTHER’S MOTHER’S DAY」なのに、邦題はなぜ「おかあさん どーこ」なのか? これにはおそらく、訳者の小河内芳子さんの感じたアメリカと日本に於ける価値観の違いが、如実に表れているようで興味深いものがあった。 ローナ・バリアンの絵は、まるで大人の塗り絵のお手本を見るような、草花の活き活きとした瑞々しさを濃淡使い分けて繊細に描きながらも、それがキャラクターに向けて段々と濃くなっていくグラデーションの美しさが印象的で、中でも色が濃い分だけ、野いちごやとうもろこしの粒は、とても美味しそうに見えてしまう。 また、タイトルにもある、お母さんの行方は、ちょうど野ねずみの「ヘーゼル」が母の日にと、すみれの花束をお母さんの家に持っていったが、お母さんは留守のようで、いったいどこに行ったのかというと・・・。 そして、ここでの面白さは、その繰り返しの妙にもあって、娘にとってお母さんはお母さん、それではお母さんにとってのお母さんは? といった感じで、次から次へと繋がっていくことに、皆考えることは一緒なんだねといった微笑ましさは、やがて、そうした思いが途切れずに繋がり続けていることへの敬意に変わっていく、それはいくつになっても変わらない、母への感謝と尊敬の気持ちの表れとも感じられ、皆、お母さんから教わった大切なことを忘れずに継承しているんだなという感動があった。 けれども、事態はこのまますんなりとは終わらないところに、本書ならではの面白さがあり、ここから数ページは文章の無い、絵だけの展開になるのだが、それが何故なのかは実際に読んでみると分かるように、そこには文章を連ねている場合ではない、一種の緊迫感があって、「あのお方はどうなったの?」という謎も途中で明かされるが、それよりも気になったのは、私の中に於ける、アメリカ式楽観的終わり方であった。 確かに「まあ よかった!」なのではあるのだろう。しかし、この状況でそれを言えるのは、ある意味、余程の自信家か、ゴーイングマイウェイなのかのどちらかだと思い、ちょっとアメリカンジョーク的な感じも抱いたのは私だけだろうか? いずれにしても、日本の子どもたちがこの最後の絵を見て、どんなリアクションを見せるのか、とても楽しみ。
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