統合ヨーロッパの民族問題 の商品レビュー
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1994年刊行。著者は法政大学教授。◆21世紀で見れば、ソ連崩壊直後の中欧・東欧情勢は、現代的な問題意識醸成には直接役に立たないかもしれない。しかし、プラハの春やハンガリー動乱など、60年代の問題は前提知識として知っておく意味は高い。そういう意味でソ連崩壊後を叙述する本書も現代の問題意識の前提として知っておく意味は高い。◇本書はハンガリー、チェコ、旧ユーゴ等東欧・中欧諸国における政治問題、就中、民主主義の成立の可否について主に検討していく。
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筆者は東欧の民族問題は、社会主義のタガがはずれたためという説に疑問を呈している。筆者によると本質は彼らの「ヨーロッパ統合」への希求からだという。そして、欧米が西欧の価値観に基づいて一方に加担することが、対立に加担しているとも。 筆者はユーゴスラヴィア紛争についてこう書いている。 ...
筆者は東欧の民族問題は、社会主義のタガがはずれたためという説に疑問を呈している。筆者によると本質は彼らの「ヨーロッパ統合」への希求からだという。そして、欧米が西欧の価値観に基づいて一方に加担することが、対立に加担しているとも。 筆者はユーゴスラヴィア紛争についてこう書いている。 「ユーゴスラヴィアのなかで相対的に豊かで先進的なクロアチアとスロヴェニアが、セルビアやボスニアを切りすてるかたちで「ヨーロパ」への接近をめざそうとしたとすれば、セルビアの攻撃の客観的な分析と説明なしに、彼らの民族主義的で攻撃的な残虐性だけが一方的にメディアで報道されたことは、われわれが公正な思考と判断を養うことを困難にしたとはいえないだろうか」 これは現在、混迷を極めているシリア内戦にもあてはまると思う。
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統合ヨーロッパの、と言っても 東ヨーロッパを中心に据えた議論となっています。 1994年のものなので今とは情勢は変わっているものの こういった諸問題は今も内部にはあるものだと思われます。 また、こういった諸問題を乗り越えて 現在のEUがあるということはもちろんひとつの達成であ...
統合ヨーロッパの、と言っても 東ヨーロッパを中心に据えた議論となっています。 1994年のものなので今とは情勢は変わっているものの こういった諸問題は今も内部にはあるものだと思われます。 また、こういった諸問題を乗り越えて 現在のEUがあるということはもちろんひとつの達成であり、 「現在のEU」よいのかどうかは別で議論されるべきですが アジアブロックにおける連帯についての示唆もあると思います。 まぁ、地政学的な差がアジアでの連帯を やりにくくしているのがわかってしまったりも。
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