有間皇子物語 の商品レビュー
本書は、岩代で歌った二首で知られる有間皇子について、幼少期から19歳で討たれるまでを側用人の述懐という形で描き出す物語。 前半は養育係の女性、皇子が難波に移った後半は舎人が語り手となる。時の政局に翻弄された「悲劇の皇子」の生涯は、確かに哀れを誘うものだ。 筆者の手によって生き生...
本書は、岩代で歌った二首で知られる有間皇子について、幼少期から19歳で討たれるまでを側用人の述懐という形で描き出す物語。 前半は養育係の女性、皇子が難波に移った後半は舎人が語り手となる。時の政局に翻弄された「悲劇の皇子」の生涯は、確かに哀れを誘うものだ。 筆者の手によって生き生きと描かれる皇子は、才気煥発であったがゆえに時の権力者にさぞ疎まれたであろうと読む者の想像を膨らませてくれる。 語り手の言葉遣いが少しくどい気がすることや、中臣鎌足を持ち上げ過ぎているのでは?など、気になる点がないではないが、主役の有間皇子が魅力的に描かれているので一気に読めた。 特に「気鬱の病」にとりつかれた時の牟婁への湯治の旅で生気を取り戻して晴れやかに歩く姿は、皇子の最期を知る読み手として嘆息が漏れた。 中大兄皇子が徹底的に悪役として描かれているのは、ちょっと小気味よいかも。 皇子が騙し打ちにあい、無念の死を遂げた地にある藤白神社には、有間皇子を祭神とする社があり、皇子の霊を慰める人々が訪れるという。
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