深川澪通り 燈ともし頃 の商品レビュー
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深川通木戸番夫婦シリーズの2作目。 江戸市井人情モノの王道をひた走っている佳作。 シリーズを通しての主人公木戸番夫婦はこの作品では主人公ではない。重要な役どころだがあくまでわき役に徹しているところが良い。 この本に収録の中編2作はいずれも木戸番夫婦に関わりの深い人物が主人公となっており、彼らの大切な心の拠り所として木戸番夫婦が登場するという筋立て。 有名になること、贅沢をすること、異性にもてること…。どれも幸せな事であるが、それを極めようとして果たして幸せになるのか?幸せはそんなところにあるのか? 幸せは掴み取るものではなく、いまここで感じ取るもの。そういう言葉を聞いた事もあるが、木戸番夫婦は行動で表情で態度でそれを指ししめしてくれるし、実際主人公たちに(つかの間の…かもしれないが)幸せな時間を与えてくれるのである。それを読むとき、俺も確かに幸せを感じられた。そういうものなのであろう。幸せとは
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深川澪通りシリーズ2作目の時代小説長編2話。澪通り木戸番小屋の夫婦お捨と笑兵衛の登場する江戸の下町を描く繋がりのある2話です。 《藁》孤児の政吉は子供の頃はかっぱらいで飢えをしのいでいたが、ぼて振りの塩売りをしている時、喧嘩をして怪我をし木戸番夫婦に介抱してもらい知り合う。笑兵衛に字を教えてもらい狂歌を始め狂歌社中主宰者に認められる、一緒になったおきくに煙草屋を任せ、江戸一の狂歌師丸屋三鶴として売り出そうとするが、放置していたおきくが賃粉切りの雇い人勘太と、駆け落ちをし行方が分からなくなった… 木戸番夫婦を頼りおきくに逃げられた事を隠しとおすが…狂歌仲間とのいざこざを起こし煙草屋も店を〆、。ぼて振りの塩売りに戻り、三春屋の労咳の遊女おうたと付き合い始める。子供が出来た事で勘太と小田原宿に逃げたおきくは死産してしまい、いざこざが絶えず捨てられたおきくは、身体を売りながら木戸番夫婦を頼り江戸に戻る……。 《たそがれ》仕立て屋のお若が雷雨の時に知り合った、妻子がある薬売りと長年付き合っていた。雇っている三人の若い娘たち・男癖の悪い幼馴染おえい・長屋に住み藍玉問屋の五兵衛に見初められ嫁ぐおとよと政吉を慕うが仕事が長続きしない三次郎の姉弟それぞれの人生模様。塩売りに戻った政吉が求め身請けされた労咳のおうたを、世話し看取るおきくと人情あふれる構成、格別大きな事件が起きるわけでないが、内容は重い、江戸の下町情緒とお捨さんの明るい笑い声に癒される作品。
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