プレストン・スタージェス の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
★★★★☆ プレストン・スタージェスを最初に知ったのは『力と栄光』の脚本家としてだ。 この映画はその非常に斬新な構成で知られており、あの『市民ケーン』が本作の構成を元に作られたといわれている。 脚本のあまりの素晴らしさゆえ、この映画は「ウィリアム・K・ハワード監督作」としてより、「プレストン・スタージェス脚本作」として有名であるといえば、その凄さが少しは伝わるだろうか。 本書はスタージェスの伝記で、その誕生から死までを数々の証言や調査によって克明に描きだしている。 これまでその作品を観るだけだったので、まさかこれほど波瀾万丈の人生を歩んだ人だとは思わなかった。 恋多き母に連れられて欧州各地を転々とした少年期、脅迫まがいのことまでして金をせびってくる実の父、そして彼が「私の父」と呼んだ義父(スタージェスという名字は彼から)。 古い体質の撮影所システムに真っ向から戦いを挑んで道を切り開いていった彼の、ある意味ドン・キホーテ的ともいえる猛進ぶりは、天衣無縫でどんなときでも希望を忘れなかった母親からの影響を感じさせる。 浮き沈みの激しい大変な人生だし、絶頂期は決して長くはなかったけれど、彼の作品を楽しんだ者として、彼を慕った脚本家が彼の死後彼に送ったこの言葉にはうなずかざるをえない。 「もしあんなに素敵な輝きを放てるのなら、我々の多くは喜んですみやかに燃え尽きるでしょう」
Posted by
- 1