往生要集(上) の商品レビュー
紫式部の『源氏物語』の「宇治十帖」では、浮舟に取り憑いていた物の怪を祈祷によって退散させ、芥川龍之介の『地獄変』では屏風に描かれた絵に感嘆の声を漏らす“横川の僧都(よかわのそうず)”のモデルとされるのが、この『往生要集』の著者である恵心僧都(えしんそうず)・源信(げんしん)。源信...
紫式部の『源氏物語』の「宇治十帖」では、浮舟に取り憑いていた物の怪を祈祷によって退散させ、芥川龍之介の『地獄変』では屏風に描かれた絵に感嘆の声を漏らす“横川の僧都(よかわのそうず)”のモデルとされるのが、この『往生要集』の著者である恵心僧都(えしんそうず)・源信(げんしん)。源信は天台宗の僧として、浄土思想の観点から多くの仏教の経典や論書などを解釈し、極楽往生に至る求道の方法を著したものが『往生要集』で985年に書きあげられたとされます。それは後の法念が興した『浄土宗』や親鸞の『浄土真宗』の教義にも大きな影響を及ぼすことになりました。ということで、平安時代後期には広く知られ、法力を備えた偉大な僧侶として尊敬されていようで、“横川の僧都”として登場したのですね。 さて、『往生要集』の中味ですが、仏教の経典や論書などに記された言葉を引用し、それを解説し保管する形で源信の考えが添えられています。これを逆の視点から観ると、源信の考えを裏付ける意味で数々の経典や論書が引用されているという捉え方もできます。しかし、こういった形式は『淮南子』や『五行大義』などの中国古典にも見られることで、なお且つ現代にも通じる論証方法の一つであり、この本では浄土思想たるものの原点が理解しやすく述べられています。 内容(「BOOK」データベースより) 源信(942‐1017)は、第一章で八熱地獄の一つ一つの大きさ、業因等に触れ、その極苦の様をリアルに描いて罪の恐ろしさを思い知らせる。その上で、地獄に堕ちず極楽往生するには一心に仏を想い念仏する以外にないと説く。源信の影響は法然・親鸞の浄土教にうけつがれるが、とりわけ地獄思想は文学・絵画に深い影響をおよぼした。
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