有田学級の「道徳」の授業 の商品レビュー

有田和正【著】

2019/11/25

有田先生が「道徳の時間（以下、道徳）」について書いた著書は、ほぼこれだけである。私の中で、「道徳の授業とは、こういうものかな」というものができつつあるところ。有田先生の道徳は「それとは異なるだろう」という思いもあり、今日まで避けていたところがある。「意を決して」読んでみた。いろいろ考えさせられるところもあった。学びもあった。

①　ネタ開発について
　新聞や雑誌記事などのノンフィクションや、子どもの身近に起きていることを考えさせている。そして、子どもたちに奥深い追究を促している。ねらいが「今の子どもの姿」に止まっていない、「将来（大人になった頃）の子どもたち」を有田先生は考えられて問いや教材を投げかけている。それに立ち向かう（立ち向かえる）子どもたちもスゴイ！鍛えられた子どもたちの「総合力」が有田学級の道徳の時間から見えてくる。

②　子どもたちの追究（ノート記述）
　鍛えられた子どもたちはここまで考えることができて書けるのかと驚きである。小６の3学期の授業でのノートなど、大人でも書けないだろうという内容を、子どもたちは授業を通して考えたことを書いている。さらに驚くのが、家に帰ってからの追究の持続である。授業があったその日、翌日ぐらいなら書いてくるのは、まだ分かる（それでもすごいことなのだが）。しかし、有田学級の子どもたちは月日が経っても追究したことをノートに書いてきている。それだけ、子どもたちにとって強烈に残る授業であったのだろうと想像できる。それと共に、道徳以外の他教科も、道徳と同様に魅力的・刺激的な授業であり、子どもたちはそれらについても追究をしているのだろう。子どもたちの「総合力」で書かれた文章…最高峰のモデルとなる。

③　「この話は、どんなことを言おうとしているか」
　この発問、教材がシンプルだからこそ、子どもたちから多様な意見が出てくると考える。魅力的な発問であると感じた。この発問で語れる子どもたち……鍛えられている証拠である。

「判断に迷う授業」での終わりの有田先生の語りがとても勉強になった。こういう語りができる人間性を身につけた教師を目指したい。