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黒人はなぜ待てないか の商品レビュー

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2024/03/24

1964年、つまり歴史的なワシントン行進、そしてケネディ暗殺の翌年に書かれた本。 M.L.キング関連の本は、時々、思い出したように読んでいる。本人によるものは、これまでは、演説や説教を中心に読んでいた。ある程度、短い時間の中で、明確なメッセージが説得力を持って語られるので、彼の...

1964年、つまり歴史的なワシントン行進、そしてケネディ暗殺の翌年に書かれた本。 M.L.キング関連の本は、時々、思い出したように読んでいる。本人によるものは、これまでは、演説や説教を中心に読んでいた。ある程度、短い時間の中で、明確なメッセージが説得力を持って語られるので、彼の思想と情熱がストレートに伝わってきて、パワーが湧いてくる感じがする。 演説集は読むものがなくなってきたので、キングが50年代の活動を中心に書いた著作「自由への大いなる歩み」を読み、これはまたこれでインパクトがあった。やはり当事者が、自らの活動をオンタイムに近い時点で書いた本には、演説とは違う迫力がある。 この「黒人はなぜ待てないか」は、60年代の初めの方の活動、つまり、バーミングハム闘争からワシントン行進を中心に書いたものである。 このあたりは、公民権運動の一つのピークとも言えるところで、いろいろな本でも読んだことがあるが、やはり本人が書いていることには本当に切実な思いが溢れて、途中で思わず涙ぐんでしまった。 キングは、63年を「黒人革命」と呼んでいる。本当にこれは革命とでもいうべき出来事であったと思う。状況は、革命のように暴力的な方向に常に向かいそうになり続ける。が、それでも非暴力の活動は続く。先行きどうなるかわからない中で、こうした活動が続いていくこと、一つ一つの出来事に悩みながら、意思決定を行い、前に進んでいくこと。63年は、歴史的に稀な非暴力革命の年だったんだな。 この本では、そうした活動を報告しつつ、本のタイトルにもあるように、「黒人はなぜ待てないのか」、つまり、一定の漸進的な改革が起きているのだが、そんなに性急に変化を求めなくても良いではないか、という一見、良識的にも思える意見への熱い反論である。 ここでのキングのそうした良識的な意見への批判は厳しい。非暴力というのが、受動的な活動ではなく、非暴力という方法による闘争であることが改めて確認できる。 そして、このキングの反論は、当時のアメリカで高まる黒人の不満、そしてそれに対抗する白人の不満のレベルが高まり、非暴力活動の限界点を越えようとしている状況に対する危機感もあったのだろうと思う。 この本では、黒人の大きな不満を言語化し、マジョリティ に訴えかけることで、なんとか暴力的な状況を回避しようという戦略をとっているのだと思う。 これは、非暴力や公民権運動などについて学ときには、必読 の本だったんだな。今頃、これを読んでいることの不明をはじつつ、今だから、当時の文脈を理解しつつ、この本が読めたのだなと思った。

Posted byブクログ