テロルの現象学 の商品レビュー
笠井潔の評論作品のな…
笠井潔の評論作品のなかで間違いなくベスト1です。「今」だからこそ再読されてしかるべき本だと思います。笠井潔の小説、特に矢吹駆の思想的背景に興味のある方にオススメします。
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私もまた 駆という…
私もまた 駆という主人公に魅せられた人間の一人なんですが、多分彼が実在したら そばになんてよらないだろうな。一緒にいて楽しい人間とは思えないですもん。だけど その陰鬱ともいえる思考は魅力です
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連合赤軍事件を思想的に総括するために、笠井が、苦闘して書いた思想書。 革命の希望に燃えた純粋な若者たちが落ち込む党派観念の罠。 善意が醜い悪意に変転し、そこから抜け出すことの出来ない地獄。 笠井はこの著作で、その罠を断ち切ったと断言するが、果たしてそうか? 観念を観念で批判して...
連合赤軍事件を思想的に総括するために、笠井が、苦闘して書いた思想書。 革命の希望に燃えた純粋な若者たちが落ち込む党派観念の罠。 善意が醜い悪意に変転し、そこから抜け出すことの出来ない地獄。 笠井はこの著作で、その罠を断ち切ったと断言するが、果たしてそうか? 観念を観念で批判してはならない。 観念は観念の内部でショートサーキットを起こし、無限循環を発生させるからだ。 それが内面のテロリズムだ。 観念を破壊することは出来ない。 唯一の方法は観念を自壊に導くことだけだ。 これは現代思想擁護でいえばデコンストラクションということだ。 コレが本書の結論だ。 同じ問いを、共産党リンチ事件に関わった埴谷雄高は、「死霊」で追求し、ドストエフスキーは抜け難い党派観念の深淵を「悪霊」で描いてみせた。 問題の所在は分かっている。 そのメカニズムも分かっている。 メカニズムの回避策も分かっている(かのようだ)。 しかし、その罠を現実に回避できるかどうかは別の問題だ。 笠井は「共同観念論」を展開する。 一方、吉本隆明は、共同幻想論を展開した。 共同幻想論は、自己幻想から対幻想を媒介として共同幻想(国家)成立の機序を説明している。 概略はそうなのであろうが、細部を見ると疑問点が出てくる。 それはスタートラインの問題だ。 吉本はスタートラインとしての個人幻想を置く。 人は共同幻想の中に生まれ落ちる。 したがって、個人に準拠すると、共同幻想がスタートラインでなければならない。 疑問点とは、実は、スタートラインとそのものは設定できないのではないか、ということだ。 個人幻想-対幻想-共同幻想-個人幻想。。。という、エンドレスのスパイラル構造、ウロボロス構造の流動的な運動こそが実態なのではないか? 上昇するスパイラルによって、最上部から見ると、共同幻想は同心円状に、拡大していく様に見える筈だ。 笠井の理論の共同観念と個人観念は、吉本の共同幻想と個人幻想に相当する。 そして、笠井の理路は吉本と異なり、共同観念からスタートする。 そこから個人幻想が対抗共同観念として析出してくる。 これは個人史を前提とすると納得できるが、この共同観念と個人観念の関係も流動的で、ダイナミックなものと考える必要があるのではないか。 両者の関係もウロボロス的であり、固定でも一回的でもないはずだ。 笠井の理論で首を傾げざるを得ないのは、自己観念が党派観念に巻き込まれるという理路だ それだけ見ると、全共闘運動、連合赤軍事件の理論的解釈のように見える。 しかし、どう考えても党派観念は共同観念の一種でしか無い。 共同観念から独立して党派観念があるかのように論ずるのはおかしい。 党派観念は共同観念の一つのパターンに過ぎない。それを踏まえた上で党派観念の悪を暴くのであれば納得しうる。 笠井理論が破綻しているのは、さらに集合観念という、共同観念を食い破る新たな観念が突然登場し、それが称揚されるところだ。 笠井の説では集合観念は1848年の革命や1968年の革命の勃興期に見られた高揚し、一体感をもたらす体制批判の観念だ、と定義される。 しかし、これも共同観念の一種だ。 党派観念は、集合観念が姿を変え、頽落していった姿なのではないか? 党派観念を悪として断罪し、集合観念を善として称揚するのは、共同観念の一形態の時間的変異を特権化しているだけではないのか、と思わざるを得ない。 笠井理論によって、連合赤軍事件を代表とする党派観念の悪を乗り越えることは出来るものではない。 乗り切ったと思い込んだ笠井自身が、集合観念を後生大事に抱えながら、気が付いたら頽落した党派観念の中にいたということにしかならない、そんな危惧を感じずにはいられない。 だから、これで総括が終わったとは言えない。
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作者の実践的方法論を示した著作が『バイバイ、エンジェル』だとすると、こちらは理論的側面を記した著作。どちらが欠けても片手落ち。
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テロリズムはいかにして発生し、成長をとげるものか その観念的メカニズムについてまとめあげた一冊 ただ、文庫版あとがきにもあるとおり、93年の時点で すでにこの本だけでは説明しきれない事象が発生していたようだ 同じ作者の探偵小説「オイディプス症候群」においては ナルシシズムによる観...
テロリズムはいかにして発生し、成長をとげるものか その観念的メカニズムについてまとめあげた一冊 ただ、文庫版あとがきにもあるとおり、93年の時点で すでにこの本だけでは説明しきれない事象が発生していたようだ 同じ作者の探偵小説「オイディプス症候群」においては ナルシシズムによる観念の頽落を暗示させるような描写がなされている
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ずっと気合が入らなくて積読だったけど、ビンラディンが殺害された今こそ、改めて<観念の暴力>であるテロリズムを捉え直してみたい。本書を読み終えたら、9.11以降の世界を再構築し、国家策謀の本質を問うゼロ年代最高のサイエンス・フィクション、伊藤計劃『虐殺器官』へ。
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テロルという観念的暴力を喚起し続ける<観念的なもの>の発生現場に遡行して、その発生史的必然性を解読する・・・ ああ、書いてて訳がわからない。 ここに登録する本は読み終わったものばかりなんですが、これだけはまだ途中です(笑)。 中断しつつもぼちぼち読んでます。
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