黄金時代 の商品レビュー
中城ふみ子、斎藤史、…
中城ふみ子、斎藤史、近藤芳美、福島泰樹らの歌人から、太宰治、中原中也、鈴木志郎康ら詩人までを論ずる「詩歌人」論、そして自伝抄「消しゴム」を収録。
文庫OFF
著者の歌論、詩論と、自伝「消しゴム」を収録しています。 著者は詩を、「行為としての言語」としてとらえようとしています。ただしこのことは、詩を政治的実践に直結させるような立場とみなしてはなりません。もしそのように理解するのであれば、詩人は「ただ日常の現実の中にとりこまれてしまう」...
著者の歌論、詩論と、自伝「消しゴム」を収録しています。 著者は詩を、「行為としての言語」としてとらえようとしています。ただしこのことは、詩を政治的実践に直結させるような立場とみなしてはなりません。もしそのように理解するのであれば、詩人は「ただ日常の現実の中にとりこまれてしまう」ことになると著者はいいます。著者が試みたのは、「ダイナミックな肉体の運動たとえば100メートルを十二秒台で走ることによって、ことばそのものをゆさぶってゆく詩作法」でした。「モダン・ジャズが自由詩ならば、ボクシングは定型詩である」と述べられているように、著者は詩をジャズの演奏やボクシングの試合と同様のものとして理解しようとしています。そうした著者の考えを端的に要約すれば、行為によってみずからの存在をかたどることだということができるでしょう。 本書には、石川啄木や塚本邦夫など、多くの歌人たちに対する批評が収録されていますが、それらの議論の背景にあるのも、こうした「行為としての言語」という考えかたであるように思います。著者は、「作品をあくまで、作者の私有物と考える限り、「私」性の文学としての短歌は、落書などよりさらに社会性を持ち得ないのであって、そこで問題にされる「自己のヒューマンな内部」などは、きわめて個人的な、……それも、作者個人の実体験を決して越え得ないほど個人的なひ弱さを露呈しているように思われるのだ」と述べて、啄木に対する批判をおこなうとともに、そうした問題を乗り越える試みとして、塚本の詩の発展過程を読み解いています。
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