明日という過去に の商品レビュー
夫に先立たれた妻が先輩女性に手紙をしたためるという、ごくありきたりな入口からは想像できないほど、愛憎、疑念、嫉妬の闇が奥深くまで拡がっている。 書簡のやりとりを通じて、実は相手の本音を引き出そうとする女性ふたりの駆け引きでもあるので、小出しにされる事実が必ずしも真実とは限らない...
夫に先立たれた妻が先輩女性に手紙をしたためるという、ごくありきたりな入口からは想像できないほど、愛憎、疑念、嫉妬の闇が奥深くまで拡がっている。 書簡のやりとりを通じて、実は相手の本音を引き出そうとする女性ふたりの駆け引きでもあるので、小出しにされる事実が必ずしも真実とは限らない。嘘をつき、真実を隠すことで相手の反応を窺おうとする心理戦の繰り返し。 通常ならこのパターンに慣れた時点で飽きがきそうなものだが、この作者の手にかかればそんな心配は無用である。ふたりの女性の表の顔と裏の顔、それを何度も何度も重ね塗りすることによって、先の読めない情念の世界へ読者を引きずり込んでいるのだから。 ミステリ色はほとんどないが、手法に注目してみると、手紙のやり取りだからこそ成り立つ仕掛けがさり気なく組み込まれている。軽い驚きと共に、そこからギアチェンジしてラストまで畳み掛ける手際は見事。手紙のやり取りだけだと認識して読むのがお薦め。
Posted by
一言でいってしまうと 往復書簡という形を取った女のたたかい。 終始 柔らかで穏やかな言葉遣いで綴られた二人(一時的には三人)の女の手紙のやり取りなのだが その内容たるや 四次元方程式にもにた男女の関係の中での静かで激しい闘いそのものなのだ。 真実らしく語られた手紙の内容が...
一言でいってしまうと 往復書簡という形を取った女のたたかい。 終始 柔らかで穏やかな言葉遣いで綴られた二人(一時的には三人)の女の手紙のやり取りなのだが その内容たるや 四次元方程式にもにた男女の関係の中での静かで激しい闘いそのものなのだ。 真実らしく語られた手紙の内容が「嘘でした」のひと言で何度覆されることか。 結局何が言いたいのか 最後までよく判らないままだった気もするし 途中 これもまた嘘なのぉ〜 と笑い出したくなってしまうことがなくもないが 結局 女なんて いや人間なんて 薄い一枚の仮面の下に 何を仕舞いこんでいるか想像もつかない ということなのだろう。と 筆者が見たら溜息をつくかもしれない自分なりの納得の仕方で読了(笑
Posted by
- 1