異形の王権 の商品レビュー
シェイクスピア、蜷川幸雄、バフチン、日本の中世と様々な人物・文化が繋がった興味深い読書になりました。かなりマニアックな内容ですが、日本の文化を知る上でも興味深い作品です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
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※このレビューにはネタバレを含みます
鎌倉末期、天皇制は存続の危機に瀕していた。東国への支配は及ばず、モンゴル襲来を機に九州への支配権も失われようとしていた。後醍醐天皇は密教の呪法や律僧、悪党・非人を動員して天皇専制を目指した。この「異形」の王権は3年で崩壊してしまうが、幕府の崩壊と王権の没落は列島を大混乱に陥れた。頼るべき権力の不在は自治的な一揆や自治都市、自治的な村落の勃興を促すとともに、天皇・神仏の権威の低下はそれと結びついた「聖」なる集団としての職能集団の賤視をもたらした。
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読みやすさ ★★★ 面白さ ★★★ ためになった度 ★★ 扇の骨の間から見るしぐさのところと、後醍醐天皇のところが面白かった。
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異形の王権とは後醍醐天皇の治世のこと。 後醍醐天皇は建武の新政で天皇自ら政治を行なったことは学校でも習うが、どういう改革をしたかを知っている(覚えている)人は少ないのではないか。 後醍醐天皇が密教興盛を図ったことは有名だが、それがどういう意図を持って行われたか、当時の経済事情...
異形の王権とは後醍醐天皇の治世のこと。 後醍醐天皇は建武の新政で天皇自ら政治を行なったことは学校でも習うが、どういう改革をしたかを知っている(覚えている)人は少ないのではないか。 後醍醐天皇が密教興盛を図ったことは有名だが、それがどういう意図を持って行われたか、当時の経済事情や政治状態を明らかにした上で説得力ある解説をしている。 私は後醍醐天皇の改革を怪しく思っていたが、当時の政治経済状況を鑑みると、時代に即した偉大な改革だったのではないかと読後感を持った。 私はこの本をとても興味深く読んだが、タイトルと内容に齟齬があるのが気になった。 異形の王権=後醍醐天皇の治世を直接扱っているのは最後の章だけなのである。大半は「異形の人々」を扱っており、随分長い導入という感じがしてしまう。 ただ、それでも絵巻物からの歴史読解など、勉強にならないわけはないので十分読む価値はあるはずだ。
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12~13世紀の習俗から、歴史の陰の部分を掘り起こそうという本。 先日読んだ本(「山の人生」)が民間伝承からそれを読み取るなら、これは現代に伝わっている図版を解いて行こうという(一応)趣向です。 「異形」というのは、卑賤の者たちの装いのこと。 シモジモの服装なんてのは、確かに...
12~13世紀の習俗から、歴史の陰の部分を掘り起こそうという本。 先日読んだ本(「山の人生」)が民間伝承からそれを読み取るなら、これは現代に伝わっている図版を解いて行こうという(一応)趣向です。 「異形」というのは、卑賤の者たちの装いのこと。 シモジモの服装なんてのは、確かに文書には書かれにくく、“なんとか図絵”の片隅に描かれているのを拾って行く作業なわけです。 卑賤とは言ってもそれは金襴や覆面、柿色の山伏服で、それらがなぜ卑賤に貶められていったか?(被差別化の進行) や、名前くらいは知っている「後醍醐天皇」が、権力を我が手に奪還しようとしたときに、密教の法衣や法具を手にしていた…すなわち異形を身にまとっていたのはなぜか? それが後世に与えた影響は? などが語られて行きます。 一般啓蒙書ではなく学術論文で、専門用語が解説なく出て来たり、議論が極度に微細にわたったりしているので、若干読みづらくはあったのですが、当時の天皇がこうして一個の性格として見えて来るのはやはり面白いですね。 高校時代とかにこういう本を読むようなリテラシーがあったら、日本史も楽しかった(し頭に入った)ろうなぁ、というのが率直なところです(´Д`;)。
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網野善彦 「 異形の王権 」 日本の中世史の本。中世史が こんなに人間的で 魅力的とは 思わなかった。 後醍醐天皇の異質性、後醍醐天皇が目指して国家、後醍醐天皇の衰退と非人など差別の関係など 面白かった 後醍醐天皇と 飛礫(つぶて) が印象に残った 渋沢敬三 「 絵巻物によ...
網野善彦 「 異形の王権 」 日本の中世史の本。中世史が こんなに人間的で 魅力的とは 思わなかった。 後醍醐天皇の異質性、後醍醐天皇が目指して国家、後醍醐天皇の衰退と非人など差別の関係など 面白かった 後醍醐天皇と 飛礫(つぶて) が印象に残った 渋沢敬三 「 絵巻物による日本常民生活絵引 」 *絵巻物を 歴史学、民俗学等の資料として読む〜画の意味 *絵巻物から個々の場面を抽出し模写する→身辺雑事に見える問題を歴史の対象とする→歴史学を命あるものにする なぜ 蓑笠が非人、乞食の服装となったか *蓑笠=一つの変相服装→神、まれびとの衣裳→蓑笠姿のまれびとは 妖怪となり〜乞食となった *蓑笠は 異類異形の衣裳〜かっての神の姿、聖なる衣裳が、南北朝を境に 忌む存在となる *蓑笠=失うものは何もない 抑圧された非人、乞食の衣裳の象徴→蓑笠を身につけることにより 不退転の決意で 一揆をした 飛礫を打つ(つぶて。石を投げる) *飛礫打が 異類異形の人々、山伏、鬼、天狗と結びつき、伝統的な悪党的兵法とつながっている *南北朝を境に 飛礫は 非人的な武力となる *非人の姿をして 飛礫をもって 一揆する→蓑笠同様、人の意志を超えて力を 自ら感じとり 権力に向かった 異形の王権=南北朝の後醍醐天皇の政治の特異さ *異形の人々を集めて 新しい力を呼び覚ました〜後醍醐は、異類異形と言われた 悪党、非人を軍事力として利用した *後醍醐が自ら法服をつけて 真言密教の祈祷を行った 南北朝動乱=異形の王権の倒壊 *天皇の聖なる存在は失われた→天皇と結びついた神仏の権威も低落=聖性の没落 *聖性の没落→聖性に依存する 芸能民、非人など 聖なる異人が差別される
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小論集。江戸時代の「かぶき者」の前身とも言える「婆娑羅」を「異形」としてとらえ、なかなか興味深い考察をしている。 この網野善彦さんは、もちろん第一線の歴史学者なのだけれど、考え方や論じ方が並の歴史学者とは異次元に属するかのような面白さ。どうやら彼は民俗学の動向に通暁していたらしく...
小論集。江戸時代の「かぶき者」の前身とも言える「婆娑羅」を「異形」としてとらえ、なかなか興味深い考察をしている。 この網野善彦さんは、もちろん第一線の歴史学者なのだけれど、考え方や論じ方が並の歴史学者とは異次元に属するかのような面白さ。どうやら彼は民俗学の動向に通暁していたらしく、歴史学と民俗学は協力しあって新たな知を発見していくべきだ、というようなことを本書の中で言っている。 甥の中沢新一はこの網野善彦の影響をかなり受けていると思う。中沢さんの理論は、ちょっと問題を単純化しすぎている嫌いがあるが。
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p.244 そして後醍醐は、非人を動員し、セックスそのものの力を王権強化に用いることを通して、日本の社会の深部に天皇を突き刺した。このことと、現在、日本社会の「暗部」に、ときに熱狂的なほどに天皇制を支持し、その権力の強化を求める動きのあることとは決して無関係ではない、と私は考え...
p.244 そして後醍醐は、非人を動員し、セックスそのものの力を王権強化に用いることを通して、日本の社会の深部に天皇を突き刺した。このことと、現在、日本社会の「暗部」に、ときに熱狂的なほどに天皇制を支持し、その権力の強化を求める動きのあることとは決して無関係ではない、と私は考える。いかに「近代的」な装いをこらし、西欧的な衣装を身につけようと、天皇をこの「暗部」と切り離すことはできないであろう。それは後醍醐という異常な天皇を持った、天皇家の歴史そのものが刻印した、天皇家の運命なのであり、それを「象徴」としていただくわれわれ日本人すべても、この問題から身をそらすわけには決していかないのである。 天皇と天皇制の問題は、こうした形でいまもなおわれわれの前に存在しつづけている。
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「異類異形」といわれる人々が中世社会でどう位置づけられてきたのかを,絵巻に描かれた人々の服装やしぐさなどの分析を通じて興味深く考察されている。
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これまた著者の代表的著作。後年、考え方が偏って、ワンパターン化することも多いが、この頃はまだいい。 歴史に関心がなくても面白い本である。
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