壬申紀を読む の商品レビュー
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1993年刊。著者は横浜市立大学名誉教授。 本来は万葉集他を研究する著者が記す、古代史最大の内乱「壬申の乱」解読書。といっても基本的には、文献史料の中、日本書紀の「天武天皇紀上」に大半を依拠する上、他の古代史学の碩学の見解を参考にした指摘も多い。 そもそも本書の執筆動機が、万葉集研究につき、壬申の乱前後を歌学的・文化的に大きな画期だと感じた著者が、乱前後で差が生まれた理由を探りたい、という問題意識に支えられている。 が、その試みが本書で成功しているかは疑義がある。 確かに大伴氏は挙げて天武側についた。 結果、家持ら大伴氏が生き残り、乱後に彼らは相応の地位を得、それが万葉集編纂等を帰結したとの指摘はある。 が、これ以外は凡そ壬申紀の解説書に止まるからだ。 なお、①天武側で戦った方に渡来系の氏族、渡来人が多く見受けられる点、②不破の関その他の三関は、実は敵対者の東国への逃亡防止のための関ではないかとの指摘、③天武の息の中では年長の高市皇子の活躍、④白村江敗戦は天智天皇(当時は称制下だが)に対する、特に地方豪族の信頼を低下させ、後の大友皇子支持を減じせしめた点には注意が必要か。
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