ガンバとカワウソの冒険 の商品レビュー

斎藤惇夫【著】

2020/04/04

『ガンバの冒険』シリーズ第3作にして、最終巻。今はもう絶滅させられてしまったニホンカワウソを巡る鼠たちの冒険。

第2作目『冒険者たち』にはイタチのノロイという悍ましくも魅力的な悪役を登場させていたが、本作で描かれる悪は、前巻と違いイタチではなく、または鼠たちと死闘を繰り広げる野犬でもなく、（個人としては一人も出てこないものの）川を汚しカワウソを殺し尽くした人間たちである。

執拗なほど詳細に描かれる川の描写は、それがもはや存在しないものであるからこそ、ひたすらに美しい。それは読者に、失われたものへの強い憧れと、罪悪感とがないまぜになった言いようのない気持ちを味わわせる。

前巻から引き続き活躍するガンバ、イカサマ、シジンやガクシャたちの勇姿はもちろん、今巻で登場するカモメのキマグレのあり様も素敵。
全体に悲しさを漂わせながらも、生き生きとして優しい冒険物語。