遷都 の商品レビュー
1970年代に発表された平安京に関わる藤原氏の謀略(?)を扱った3作「遷都」「応天炎上」「糸遊」を収録。「糸遊」は安和の変がテーマだが、蜻蛉日記の安和の変に係る記述の欠落(?)について若き日の紫式部が探求するという凝った作りで、いわゆる王朝文化華やか云々の枕詞が付せられがちな時代...
1970年代に発表された平安京に関わる藤原氏の謀略(?)を扱った3作「遷都」「応天炎上」「糸遊」を収録。「糸遊」は安和の変がテーマだが、蜻蛉日記の安和の変に係る記述の欠落(?)について若き日の紫式部が探求するという凝った作りで、いわゆる王朝文化華やか云々の枕詞が付せられがちな時代が暴力(特に放火)の時代であったことについてのエンタテイニングな解釈も提示している。「応天」も、考察者役に若き日の菅原道真を配し、在原業平を重要な役割を担わせて、藤原良房が源信に味方した理由をエンタメ作家らしいものにして提示し、さらに最後の1文でSF作家らしい捻りの利いたオチをつけている。 「糸遊」は史実について、一部誤植にとどまらない勘違いによると思われる混乱した記述がかなりあって気になる。花山院譲位の後なぜか「新帝円融帝」が即位したことになっていたり、藤原義懐がなぜか花山院の「異母兄」(ほんとは叔父)と書かれていたりなど。雑誌発表ののち、このノベルス版が出る前に集英社文庫にも入っているのに、校正でも改められなかったのだろうか。(この時代に興味があるから気になるのであって、他の2作もいろいろあるのかもしれないが。)
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イメージ参照(http://blogs.dion.ne.jp/kentuku902/archives/3381318.html) (収録作品)糸遊/応天炎上/遷都
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