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近代日本の政治精神 の商品レビュー

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2017/11/30

天皇機関説論争において美濃部達吉を激しく批判した上杉慎吉の国体論を中心に、山路愛山や井上日召、馬場恒吾らの思想を検討し、近代日本の精神史を貫く問題に迫ろうとした本です。 上杉慎吉の国体論や山路愛山の国家社会主義についての紹介は興味深く読みました。ただし本書は、フロムの歴史社会的...

天皇機関説論争において美濃部達吉を激しく批判した上杉慎吉の国体論を中心に、山路愛山や井上日召、馬場恒吾らの思想を検討し、近代日本の精神史を貫く問題に迫ろうとした本です。 上杉慎吉の国体論や山路愛山の国家社会主義についての紹介は興味深く読みました。ただし本書は、フロムの歴史社会的アプローチによる近代日本の精神史研究だという点に留意が必要ではないかと思います。具体的にいうと、たとえば著者は上杉の国家主義を、西洋の個人主義の流入によって引き起こされた不安に発するものとして捉えようとしています。また井上日召を論じた箇所では、土居健郎の「甘えの理論」を参照し、井上の思想と行動の背景には、主客の分離していない状態を求める依存感情があったのではないかという指摘がなされています。 こうしたアプローチもそれなりにおもしろいとは思うのですが、政治上の問題を社会心理的な問題に解消することはできないでしょう。丸山眞男が『日本の思想』の中で、この国の議論はイデオロギー暴露というかたちに陥りがちだと嘆息していましたが、その点に対する留意が本書で十分になされているのか、やや疑問に思います。

Posted byブクログ