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歴史とアイデンティティ の商品レビュー

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2013/08/15

日本とドイツの歴史学者、政治学者の4回にわたるシンポジウムを重ねて、その結果が本になった。ポーランド、韓国の学者の言葉もテーマを重層化してくれている。なぜドイツは戦争責任をはっきりと告白し、日本ははっきりと謝罪さえもしていないのか?戦前・戦中のヒトラーと昭和天皇、戦後のアデナウア...

日本とドイツの歴史学者、政治学者の4回にわたるシンポジウムを重ねて、その結果が本になった。ポーランド、韓国の学者の言葉もテーマを重層化してくれている。なぜドイツは戦争責任をはっきりと告白し、日本ははっきりと謝罪さえもしていないのか?戦前・戦中のヒトラーと昭和天皇、戦後のアデナウアーと岸信介などの対比を明確にしている。今でこそ、私たちはヒトラーを悪魔扱いしているが、ハンス・フランクという人物が出会った後に「彼は全ての人の意識の中にあることを語った。彼は全てのことを心を込めて語り、我々、みんなが言いたいことを語ってくれた!」これは崇拝の言葉以外の何物でもない。また戦後の独社民党、日本社会党の対比も鮮やかである。環境の違いがあるにしても彼我の差は大きい。いくつかの新発見があったが、昭和天皇が実は戦争指導に御下問としてかなり口を挟んでいた!真珠湾以降の日本勝利に天皇が浮かれていた姿が木戸幸一、畑俊六、入江相政らの日記に明確に書かれているという!(須崎慎一氏の論文)4カ国の学者たちの真剣な討論から出てきたこの本は重いテーマながら、読んだ後はすっきりする。ドイツにおいて旧プロイセンの貴族が旧権威の担い手だったが、戦争で消滅し、旧東方領土から追い出され、難民化したという悲劇が、ドイツの民主化を行いやすくしたという記述はその通りだと思う。

Posted byブクログ