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親鸞のダイナミズム の商品レビュー

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2022/10/16

『親鸞のコスモロジー』(1990年、法蔵館)の姉妹編で、朝日カルチャーセンターなどでおこなわれた著者の講演をまとめた本です。 本書では、宗教的な観点から生命についての考察がなされています。現代のわれわれは個体的生命にのみ目を向けていますが、著者は個体を超えたところにより深い次元...

『親鸞のコスモロジー』(1990年、法蔵館)の姉妹編で、朝日カルチャーセンターなどでおこなわれた著者の講演をまとめた本です。 本書では、宗教的な観点から生命についての考察がなされています。現代のわれわれは個体的生命にのみ目を向けていますが、著者は個体を超えたところにより深い次元の生命の働きが見いだされると主張します。その一方で、ハイデガーによって死の問題が哲学的に掘り下げられ、それが実存の時間的構造についての考察へと進められていったことを参照しつつ、阿弥陀信仰による救済の宗教哲学的解釈を展開しています。 また著者は、二種廻向の問題についても議論をおこなっています。著者は、凡夫であるわれわれには菩薩行としての還相はむずかしいとする近代的な真宗学の立場を越えるとともに、性急に社会的実践の次元へと人びとをうながす立場に対しても慎重な姿勢を示しており、宗教哲学的な観点から往相と還相の二種廻向を一つのものとして把握する主張が展開されています。 前著同様、たいへん読みやすいことばで書かれており、宗教哲学的考察というよりも法話を聞いているように感じられました。

Posted byブクログ