プラトン全集(12) の商品レビュー
この巻を読もうと思ったのは、ティマイオスが「西洋中世で最もよく読まれ注解された」ものだと知ったからです。それは、世界の成り立ちを説明する文献として、という意味合いでしょう。読んでみると、なかなかのおとぎ話っぷりで、哲学議論どころか、自然科学という観点からしてもなかなかまともに受...
この巻を読もうと思ったのは、ティマイオスが「西洋中世で最もよく読まれ注解された」ものだと知ったからです。それは、世界の成り立ちを説明する文献として、という意味合いでしょう。読んでみると、なかなかのおとぎ話っぷりで、哲学議論どころか、自然科学という観点からしてもなかなかまともに受け止めることが難しかったです。 プラトンを読んでいつも感心するのは、研究の重厚さです。この翻訳でも、先行研究をしっかり踏まえたうえで翻訳の検討をしており、こういうところは、ハイデガーの翻訳ではまったく見受けられないところだと感じました。ハイデガーの先行研究についての議論は読むのは苦痛であることが多いんですが、プラトンの先行研究にはいつも感心させられます。たとえば『プラトンの哲学』では、ティマイオスのコーラーの議論について言及されていましたが、ティマイオス本編を読んでも素通りしてしまうようなところでも、そういう解説を読むとちがった見方ができて楽しいです。そういえば、現代思想の冒険者たちのデリダの巻でも、デリダのプラトン解釈でティマイオスが言及されていました。自分一人ではそんなに深く読み込めないところを解説してくれるという点で、プラトン解釈は興味深いものが多いです。プラトン研究にどっぷりのめりこもうというまでのモチベーションはないんですが、もう少しは掘り進めてみたいと思っているところです。次、プラトンで読みたいのは、新訳文庫で評判のいい饗宴ですかねえ。 もうひとつ興味深かったのは、ティマイオス、クリティアス、そして本当はヘルモクラテスで3部作を成す予定だったのが、クリティアスの序盤で途絶してしまったという事実。プラトンの時代からそういうことってあったんですね。そして、それがしっかりと現在まで伝わっているというところがすごい。【2019年3月13日読了】
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ティマイオス。 世界や宇宙の目的が、そもそも《善》だったら…… という仮想のもとに、プラトンが描き上げた宇宙論。 現代のプラトン批判(同一性批判・近代社会批判)の風潮からすると、 目的論的だとして忌み嫌われるかもしれない。 神>宇宙>世界>民族>国家>私 神~私までがすべて関...
ティマイオス。 世界や宇宙の目的が、そもそも《善》だったら…… という仮想のもとに、プラトンが描き上げた宇宙論。 現代のプラトン批判(同一性批判・近代社会批判)の風潮からすると、 目的論的だとして忌み嫌われるかもしれない。 神>宇宙>世界>民族>国家>私 神~私までがすべて関連しあっていてパラレルに設定されている、 こうした世界観は、現代人からするとちょっとわかりにくいかもしれない。 ただ、「善い」を目指すことは無価値ではなく、意味のあることだ、 ということを何とか言おうとした、意図をこそ汲み取る必要があるかなと。
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