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新ヨーロッパ大全(1) の商品レビュー

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2017/01/05

 一時期はイスラム諸国について少しは知っていないと、日本についてもわからないだろうとイスラム諸国に関する本を少しだけだが読んでみた。まぁ、それでなにがわかるというものでもなかったけれど、ともかく諸国それぞれ大変なんだなぁということと、ヨーロッパやアメリカやロシアがイスラム諸国に様...

 一時期はイスラム諸国について少しは知っていないと、日本についてもわからないだろうとイスラム諸国に関する本を少しだけだが読んでみた。まぁ、それでなにがわかるというものでもなかったけれど、ともかく諸国それぞれ大変なんだなぁということと、ヨーロッパやアメリカやロシアがイスラム諸国に様々に介入して一層話がややこしくなっているという印象を持った。  そして、最近読んだ『性と暴力のアメリカ』によって、アメリカもまたいろいろと病んでいるのだということを知った。そうこうしているうちにフランスは非常事態宣言を続けているし、各国でテロは常態化しているし、イギリスはEUを脱退するということまで起きている。  こりゃ、ヨーロッパについても政治システムについて少しは知らないといかんなぁ~と思っていたら、内田樹先生のツイートでお名前だけは知っていたエマニュエル・トッドさんの『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』というショッキングな内容の本をたまたまブックオフで見つけて読んでみたらたいそう刺激的だったので、まずは「世界の多様性」という本を借りて読んでみたのだけれど、けっこう厚くて返却期限がすぐ来てしまい半分も読めなかった。そして、その本の応用編みたいな本書があると調べてわかったので再挑戦してみたのである。  トッドさんは次のような家族型によってヨーロッパ各国の政治史を分析されている。 1.絶対核家族 親子間の権威の不在(自由主義)+ 兄弟間の非平等(平等への無関心) 2.平等主義核家族 親子間の権威の不在(自由主義)+ 兄弟間の平等 3.直系家族 親子間の権威主義 + 兄弟間の不平等 4.共同体家族 親子間の権威主義 + 兄弟間の平等  1.に該当するのはイギリス、オランダ、デンマーク、ノルウェイ  2.に該当するのはフランス、スペイン、北部及び南部イタリア  3.に該当するのはドイツ、スウェーデン、オーストリア、ベルギー、スイス、アイルランド 等々である。  自由と平等というそれぞれの価値の重んじ方がそれぞれの家族型によって異なるために表出するイデオロギーが異なり、様々な政治システムが発生するというトッドさんの分析はなかなか説得力があり、そもそも、ヨーロッパの政治システムの知識がない私にとってみれば、へぇ~そんなにいろいろな政治システムがあるんだ!という感心と教えてもらってありがとうという感謝しかなかった。  そもそも、自由と平等という価値はセットじゃなかった。セットなのはフランスなどの平等主義核家族の国だけである。だから、一口に啓蒙思想と言っても自由ばっかりを大切にするイギリスのロックと自由と平等をともに追求するフランスのルソーではその拠って立つ価値の重みの置き方が違うのである。  また、本書のお陰で、日本ってどうしてこうも不自由で、差別的なんだろう…と感じていたモヤモヤが解消した。日本は権威を求め、差別を求める直系家族の国なのである。こりゃ仕方がない。幼いころに家族型によって虎の威を借る権威主義や平等なんてありえない差別主義が身にしみこんでいるのである。この国からいじめがなくなるわけがない。  こんな簡単な類型分けで複雑怪奇な政治システムを分析するのは乱暴であるという批判ももっともだけど、「政治は複雑だ。」というだけでは何も言ったことにはならないのだし、とても緻密とはいえない雑な作りの私の脳みそにはこのくらい単純でないと何が何だか分からないからちょうどよい。ちょっとでもわかった気になれれば、それで安心できるのが私のような愚鈍な民である。本当にありがたい。 Mahalo

Posted byブクログ