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カフェ・タケミツ の商品レビュー

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2010/06/22

この書は武満生前の1992年11月に出た。2010年現在も絶版になっていない現役本。私はようやく17年後の2009年11月にアマゾン・マーケット・プレイスにて入手。定価(カバー表記)2750円を1190円(本体850円)で購入。恥ずかしい限り。 2010/2/20現在アマゾンで...

この書は武満生前の1992年11月に出た。2010年現在も絶版になっていない現役本。私はようやく17年後の2009年11月にアマゾン・マーケット・プレイスにて入手。定価(カバー表記)2750円を1190円(本体850円)で購入。恥ずかしい限り。 2010/2/20現在アマゾンでは「一時的に在庫切れ」とあるが、品切れや絶版扱いではない。 私の40年前、高校時代に知ったタケミツであったが、最初に触れたのは氏のエッセイ集であった。レコードを買って聴くようになるのはさらに5年ほど後、20歳を越えてからである。それから数年は細々とレコードを集めていたがやがて離れた。リアルタイムでは1975年の「カトレーン」初演を放送で聴いたのが最後であった。これ以外に武満作品を放送で聴いたこともほとんどない。 この本『カフェ・タケミツ』を書店で見たことはない。1992年頃といえば私が武満音楽から遠ざかってかなり経っていた。それでも武満の名文名高いエッセイ集はすべて買っていた。ほぼ同時期の1992年11月発刊『遠い呼び声の彼方に』も買ったが、その頃書店の本棚でこの書を見かけたかどうか? 見たかもしれないが、拾い読みをして棚に戻したかもしれない。出版社の海鳴社は科学関係の書籍を中心に出版している会社である。 著者の岩田隆太郎氏は奥付頁の略歴によれば私と同世代の農学博士で92年現在日本大学勤務の先生である。少年時より音楽鑑賞と作曲を趣味としてきたとある。私とは相当(脳髄が)違う方であった。京大農学部卒で京大交響楽団にも所属していたというので音楽的素養も豊富であろう。高校時からやっと吹奏楽でホルンを始めた私とはやはり大いに違うようだ。 私はこの書の内容をよく把握できる者ではない。初期作品から近作(92年「そしてそれが風であることを知った』)までが、武満を深く愛する者らしい筆致で淡々と語られている。こんな地道な作業は私には出来ないので羨望する。 小賢しい者は時折否定的言辞を織り交ぜておのがプライドを満足させたりするが、この著者は武満の作品を否定したり批判することはまったくない。が手放しの絶賛ばかりでなくあくまで科学者らしい冷静さで語っていく。 近年武満関係の書の出版や音盤の発売が途絶えることがないが、著者岩田氏の名は見ず、この書の続編もないようだ。氏の壮健であることを祈る。 いま(2010/2)検索したら、永年農学の分野で研究者として活躍されている様子であった。森林・昆虫関係の著書を多く出されている。 武満作品について語ることはおのれについて語ることだ。簡単に思えて困難であり如何に自己を律するかが試される。ぜひ岩田氏には92年から96年までを含めた武満全作品を語っていただき、さらに新たな知見・私見も交えたこの書の完結篇を出してほしい。

Posted byブクログ