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フロイトのウィーン の商品レビュー

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2009/10/04

ウィーンで幼年時代を過ごし、ポーランドの強制収容所を経て、アメリカへ亡命した自閉症児を主に研究した精神分析家の晩年のエッセイ集。個人的には、とても好きな一冊。とくに、第三部が秀逸(だと思う)。里親に引き取られることで、ユダヤ人であることを否認し守られた子どもたちの生。それは同時に...

ウィーンで幼年時代を過ごし、ポーランドの強制収容所を経て、アメリカへ亡命した自閉症児を主に研究した精神分析家の晩年のエッセイ集。個人的には、とても好きな一冊。とくに、第三部が秀逸(だと思う)。里親に引き取られることで、ユダヤ人であることを否認し守られた子どもたちの生。それは同時に、彼らが肉親の「喪の儀式」を永遠に延長することでもあった。自らの生を「語らない」ことによって、別離の意味を確定しないままにとどめおく姿は、ユダヤ人殲滅作戦のもった別の恐怖の一面を知ることができる。あるいは、ユダヤ人が強制収容所行きが地獄への切符であることを知りながら、なぜ従順にも(反抗もせず)従ったのか――筆者はそれを「ゲットー的思惟」と呼ぶ。個人的には、それはユダヤ人(性)にとどまらない、社会的否認のもつ内面化された力にように思える。その意味で、私もまたそこから逃れていないのかも知れない。

Posted byブクログ