木の中の魔法使い の商品レビュー
てのり文庫にある『人間になりたかった猫』の作者ロイド・アリグザンダーの(やはり面白かった)もう一冊。 下働きに追われながらも夢見がちなマロリーが倒れた樫の木の中に見つけたのは、閉じ込められていた魔法使いアルビカンだった。ところが、彼の魔法はさび付いてしまっていて、思うままにならな...
てのり文庫にある『人間になりたかった猫』の作者ロイド・アリグザンダーの(やはり面白かった)もう一冊。 下働きに追われながらも夢見がちなマロリーが倒れた樫の木の中に見つけたのは、閉じ込められていた魔法使いアルビカンだった。ところが、彼の魔法はさび付いてしまっていて、思うままにならない。時は、産業革命の時代。マロリーが住む辺りにも、進歩を語りながら、実は大悪党の地主スクラップナーがのりこんできていて…。 とんちんかんな魔法の出現で、ユーモラスながら、悪いやつにハラハラさせられる展開は巧みで、一気に読んでしまった。しかし、産業革命の時代背景に見られる愚かな人間の姿には、風刺がきいてもいる。訳者あとがきに神宮氏が「『木の中の魔法使い』は昔の話ですが、ここに出てくる問題は、今、世界で問題になっていることとじつによく似ています。」と書かれたのは、ちょうど10年前(1992年2月)。それにしても、現代は石炭どころか、原子力発電(放射能)で地球を揺るがす大問題となっているとはね…何ともはや。 次第にその勇敢さを発揮していくマロリーと力を取り戻しつつある魔法使いとのやりとり、魔力(力)の使い方、大事なこと、お話として楽しみながらも、含蓄ある内容を感じ取れるでしょう。
Posted by
- 1