理系のための独創的発想法 の商品レビュー

ミグダル【著】,長田好弘【訳】

2012/12/03

訳者の言葉を借りれば、
「自らの人生を愛し、生き、考え、感ずるすべての人々に読んで欲しい内容」

この本を読んで、人生に対して私が抱いてきた虚無感をつくりだしてきたものの正体に触れた気がした。それはおそらく、この本で言う「自己の能力を確証したいという欲望」。それが私を、無意識的に結果に拘らせたり、最良の結果以外を否定させたりさせた。また、本から得られた知識や、それを用いて浅い思慮のもと一足飛びに得た結論を友達や家族に示すことで満足感を得させ、さらなる思慮を怠り断定的に結論づける癖を身につけさせた。そして、結果に興味を注がせる余りついには、直接結果に結びつかない(と思い込んでいる)普段の生活を軽視させ、そこでの小さな気づきやそれが湧きおこす好奇心、そして好奇心が駆り立てる行動、すなわち生きること、から得られる喜びを私の人生から奪い取った。私の行動の幅は必然的に狭まり、やがて、今までやってきた行動にすら挫折を覚えたとき、あの欲望は、私の目を人生の結末である死や無へと向けさせ、虚無感を植えつけた。断定的な判断の癖と虚無感はあわさって、想像で思い描いた受け入れられない結果を私に断定的に信じこませるようになり、それが私を不幸にさせてきたのだと思う。

この本との出会いは私にとって素晴らしいことだった。

2011/08/31

１９９５年頃、大学時代の恩師からいただく。
2011/8/20〜8/31　再読
大学時代の恩師が確か定年退官されるときにいただいた本。事情があって再読した。ロシアの物理学者ミグダルが書いた、科学する上での思考法、態度など、珠玉の名言が並ぶ。最近は哲学なく研究する人が増えているが、研究に携わる人は読んでおいて損はないと思う。（といっても現在絶版のようであるが）
巻末の科学者の人物解説も素晴らしい。
こういう本を弟子に渡す先生も素敵である。