川の個性 の商品レビュー
河川の整備や管理に携わる者は、様々なスケールで川をみるべきだとして、そのスケールの中でもっとも大スケールの見方を提供してくれるのが本書。 第1章こそ、京浜・東海地方の河川を具体に俯瞰することで、川の個性、すなわち「河相」という見方のきっかけを提供してくれるが、その後は、河川流...
河川の整備や管理に携わる者は、様々なスケールで川をみるべきだとして、そのスケールの中でもっとも大スケールの見方を提供してくれるのが本書。 第1章こそ、京浜・東海地方の河川を具体に俯瞰することで、川の個性、すなわち「河相」という見方のきっかけを提供してくれるが、その後は、河川流域の「骨格・骨組み・肉付け」という形で地形・地質的な形成史を振り返ったり、とりわけ土砂生産に注目する中で「川の年齢」という見方を提供したり、流況にもあらわれる個性を提供したりする。 およそ一般的な河川工学が十分に扱っていないながらも、「個性」を語る上では必要不可欠な地形・地質学的な見方が存分に語られる。河川技術者は一度は触れておいた方がよい視座だと思う。 著者須賀も末尾にて「今後、個々の河川のもつ個性を重視、考えていかななければならない」と語ったのは1992年(出版年)のことであるが、その3年度には河川法が大きく改正され、河川環境の概念が初めて盛り込まれたり、住民参加による河川整備が謳われたりするようになった。その後も各地で豊かな環境を有する川づくりが模索されている現代にあって、ますます本書に示されているような「川の個性という見方」、「その成因への考察」、そして「それらの重要性の指摘」は重要で貴重なものになっている。
Posted by
- 1