小説とは本当は何か の商品レビュー
小説の大局観 Twitterで助川幸逸郎さんが名著だといってゐたので読んでみた。 文学史について中村真一郎の講演をまとめた本。とにかく該博、しかも重要な示唆に満ち満ちてゐる。特に「Ⅲ 近・現代小説の展開」と「Ⅳ 小説の未来」は、これからの小説の方向性が示唆されてゐて圧巻。 ...
小説の大局観 Twitterで助川幸逸郎さんが名著だといってゐたので読んでみた。 文学史について中村真一郎の講演をまとめた本。とにかく該博、しかも重要な示唆に満ち満ちてゐる。特に「Ⅲ 近・現代小説の展開」と「Ⅳ 小説の未来」は、これからの小説の方向性が示唆されてゐて圧巻。 中村は小説が下手だったが、その文学の知識は西洋から日本にわたって渉猟した圧倒的なものだった。生半可な学者顔負けで、実に偉大な読書家であったと、その片鱗をこの本からうかがひしれる。 意外だったのは、中村は1975年の『文章読本』でジョイスの「ユリシーズ」を褒めてゐたのに、1991年のこれではジョイスの小説の方向性に反対だといふこと。J・L・ボルヘスもモンテーニュを引用して、ジョイスは本質的に失敗だと言った(『語るボルヘス』岩波文庫)。つまり、中村とつきあひのあったジョイス信者の丸谷才一とは正反対ではないか。 また、中村による最後の全体小説の構想は集大成で、かなり小説において重要な示唆だとおもふ。しかもまさにこれは、大江健三郎が『取り替え子』以降でやってゐたことなんぢゃないか。 ほかには、南米の作家がすでに衰退期に入ったといってゐて、大江がガルシア=マルケスは「落葉」以降衰弱してゐるといったことを思ひ出した。 個人的なラインナップで僭越だが、大岡昇平『現代小説作法』、小谷野敦『純文学とは何か』、小谷野敦『日本恋愛思想史』、富永健一『近代化の理論』、富永健一『社会学講義』、中村真一郎『この百年の小説』、中村真一郎『文章読本』、丸谷才一『文学のレッスン』などを合せて読むと、文学の全体像についてより理解が深まるとおもふ。
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著者が行った講義を文章化したもの。 文学史における名作から小説とはどういうものをテーマにして書かれてきたのかを話している。
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