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顔のないポートレート の商品レビュー

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2件のお客様レビュー

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2016/02/07

傑作「すげ替えられた首」以来のベイヤーファンだが、本作はいささか気合いが入り過ぎたか、逆に力が抜け過ぎたのか、出来は良くない。全体的な雰囲気はフィルム・ノワールへのオマージュといった感じだが、弛緩したプロットと類型的な人物設定により、ミステリとしての魅力に乏しい。 メッセージ性...

傑作「すげ替えられた首」以来のベイヤーファンだが、本作はいささか気合いが入り過ぎたか、逆に力が抜け過ぎたのか、出来は良くない。全体的な雰囲気はフィルム・ノワールへのオマージュといった感じだが、弛緩したプロットと類型的な人物設定により、ミステリとしての魅力に乏しい。 メッセージ性の濃いベトナム戦争での報道写真により名を馳せた主人公のカメラマンは、或る事件を機にポートレートが撮れなくなる。その後、無為な芸術作品ばかりを撮り続けていた男の前に、素性不明の若い女が現れ、情事を重ねる。女との出会いは再生への道を掴むことへと繋がるが、それは同時に怪しげな犯罪へと巻き込まれていくことを意味した。 いわゆる「悪女もの」の定型に沿いつつストーリーは展開するが、裏切った女を欲情に溺れたままに追い求める男の姿は悲哀よりも憐れさを感じさせ、結末でようやく暴力的解決による再起へと至るものの、極めて利己的で共感できるものではない。

Posted byブクログ

2011/11/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

アメリカの探偵作家のウィリアム・ベイヤーのミステリー長編小説です。 フォトジャーナリストとして、ベトナム戦争で活躍し、一躍時の人となった主人公ジェフリーは、あるきっかけで人を撮ることをやめてしまい、風景、特に夜の町並みなどを撮るようになった。 ある夜、人気の無い町に出て、風景を撮っていると、女優の卵だというキンバリーに声をかけられた。「ポートレートを撮ってもらいたい」と。 ジェフリーは困ったが、彼女を写真で撮ることに決めた。キンバリーと写真を通して、段々親密な関係になり、ジェフリーにとって、自分のことを理解し、久しく忘れていた愛に目覚めさせてくれた、かけがいのない存在となった。 しかし、ある日キンバリーが姿を消した。それと同時に彼女の同居人のシャドーが殺されたことを知る。ジェフリーはキンバリーが姿を消したことが気になり彼女を探すことに。この事件とキンバリーの失踪は何か関係がある。これが謎への第一歩だった この本では写真が重要な手がかりを持っています。そして、カメラのファインダー越しからの自然の描写、人間模様、嘘と嘘の狭間に挟まれ、葛藤するジェフリーの悲惨さが滲み出ていました。そして、精密にほどこされたストーリーは、まるで精密機械のカメラのような作品です。一、二転するストーリーは、飽きることが無く、次のページを早く捲りたいと思うぐらい良くできた作品です。

Posted byブクログ