タイ・マレーシアの会計・開示制度 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
グローバル化が叫ばれて久しいです。 会計の世界でもIFRSという国際会計基準への収斂が少しづつ進んでいるように思います。ただ、それでもなお各国独自の会計・制度や「テイスト」が残っているものです。 本作はほぼ30年前の作品であり、実務書としては現状から大きく乖離している可能性があります。しかしながら、いわば国のもつ「テイスト」を知る上では、悪くはないテキストだと思います。 特にその会計制度の歴史にページを割いている点は非常に興味深く読めました。 タイは歴史を通じて西欧に征服されずに独立を維持しましたが、会計上は戦前はイギリス、戦後はアメリカの影響が強いとのことです。他方マレーシア、旧宗主国イギリスの影響が濃いものの、戦後になると当時イギリス法系諸国の会社法を最も整合的に体系づけた当時の最新法典であるオーストラリアの法体系を全面的に採用したとのこと。 確かにマレーシアやシンガポールにはオーストラリアに留学する方が相当数いらっしゃるのです。思考が貧困な私なぞは、「ヨーロッパは物価も学費も高いから親に言われてオーストラリアに留学したのかな」とか「ヨーロッパよりオーストラリアの方が近くて安心だって親が考えたから決めたのかな」とか下らない親目線の考えをしておりましたが、国柄の根本を考えればオーストラリア留学者が多いのは実践的・実務的な側面が大きかったのかもしれません。 他にも、証券市場の仕組みや有価証券報告書・年次報告書の書き方の特徴などが書かれております。こちらは読めばふーんで終わってしまう内容ですが、寧ろ随分古くから資本市場がしっかりしているのだなと感じました。マレーシアの資本市場の起源は1930年にまで遡れ、公式に1964年に形成されたようです。タイは1962年に現在の取引所が開設されています。他方近隣のベトナムはホーチミンに証券取引所ができたのが1998年、カンボジアは2011年です。 資本市場の発達は銀行にとっても非常に重要です。上場企業が定型的で信憑性のある財務情報を発信しているということは、それだけ融資につながりやすくなります。 ・・・ 実務本は時々刻々と変化する世の中にあっては時代の波に洗われてその価値が逓減してしまう可能性が大きいと感じました。ただし、歴史・過去の事は変わりません。そうした経緯や出自についての内容は古くなりこそすれ、その価値が消えることはないと感じました。その点では本書は出版から四半世紀たった今でも幾許かの価値を依然として有している実務書である感じました。
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