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あの空の色 の商品レビュー

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2016/11/22

しばらく松村栄子さんの作品を追いかけてきたが、それもとりあえずここが終着点。 物書きとして、書くことを生業にして生きることを決意したちょうどそのとき、最後の、そして始まりの瞬間。そんな大事な時の旅だったのだと思う。 旅に出るのは何かを忘れるためなのか、それとも何かを見つけるためな...

しばらく松村栄子さんの作品を追いかけてきたが、それもとりあえずここが終着点。 物書きとして、書くことを生業にして生きることを決意したちょうどそのとき、最後の、そして始まりの瞬間。そんな大事な時の旅だったのだと思う。 旅に出るのは何かを忘れるためなのか、それとも何かを見つけるためなのか。どういうわけか、節目というか決意の瞬間に旅というものはつきものだ。ただ流れて旅に出たい、それもひとりで遠い遠いところへ。 ヨーロッパという場所は、否応なしに、時の流れと異国の雰囲気を訪れるものに感じさせる。何か理解を拒むような、それでいて、誰にも門戸を開いている。そんな場所なんだと感じる。 旅をしているのは夢みるままの文学少女と物書きを決意したおとなの女性の、そんな境界にあるひと。どこまでも、彼女なりに「今」を生きているということを思わずにはいられない。未来は見えないもので、結末は誰かが予測できるものではない。だからこそ、今に委ねる、そんな松村さんの生き方。この先、生きているうちにどんな作品を送り出すかわからない、けれど、この旅をターミナルとして、またどこかで彼女の精神の姿にきっと出会える。

Posted byブクログ