公園 の商品レビュー

魚住陽子【著】

2022/02/18

あの人は今日も来ている。
様々な立場の視点で公園のあの人のことを推測し　
その存在がそれぞれの中で大きくなっていく。
あの人って本当に存在していたのだろうか。

2021/04/11

公園にいつも佇んでいるあの人の存在を知る公園の人たち。

少年野球チームの少年たちとコーチ。
足を怪我して入院中の散歩に公園を訪れる青年。
ボランティアで夫に愛想尽かされた自分を慰める主婦。
公園が見えるマンションに住む老婆。
行き交う人たちを殺人事件の題材にしている推理小説家。

それぞれがそれぞれの場所で見かけるあの人。
彼女は何を見つめ毎回公園にいるのか、
誰もがその真相を知ることもなく、自分の都合の良い解釈に置き換えて、それぞれは今日も過ごす。

あの人はもうすでに公園で死んでいる？
みんなが見ているのは幽霊のあの人なのかなあ？

2014/06/23

公園に佇む謎の女について５人の人物の視点で妄想する。

なりゆきで少年野球チームの監督を務める中年の男は、彼女を昔付き合っていた女にダブらせながら、
チームの少年の蒸発した母親ではないかと想像する。

足を骨折し、講演の近くの病院に入院している青年はやがて彼女を遠くから眺めることが日課となる。

売れない小説家の女は、日々脳内で誰かを殺しながら過ごしている。

ボランティアで公園の草むしりに参加している女は、彼女が夫の不倫相手ではないかと思っている。

そして公園が見える部屋で暮らす老女は、彼女がいなくなった大切な人だと思う。

彼女の正体は最後までわからない。
わずかに恐ろしさを感じる。

小川洋子のエッセイで紹介されていた作品。
１９９２年に刊行ということだが、時代を限定される描写がほとんどないためまったく古さを感じなかった。