リヴァイアサン(1) の商品レビュー
国家はなぜ存在するの…
国家はなぜ存在するのか、するべきなのか。この問いを深く追究したのが「リヴァイアサン」であり、後の思想に莫大な影響を与え、現在でも国家について考える際の必読書となっています。この巻の中でも第13章が最も面白いのでそこだけでも読むことをおススメします。各人のもっている力には大した差は...
国家はなぜ存在するのか、するべきなのか。この問いを深く追究したのが「リヴァイアサン」であり、後の思想に莫大な影響を与え、現在でも国家について考える際の必読書となっています。この巻の中でも第13章が最も面白いのでそこだけでも読むことをおススメします。各人のもっている力には大した差はなく、そして本性によって人びとは競争・対立するが、それゆえに各人は常に戦争状態に入ってしまう(「自然状態」=「万人の万人に対する闘争」!)。この状態を回避するためには、絶対的な権力が統治する以外になく、従って各人にとっては
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第108回アワヒニビブリオバトル「年越しビブリオバトル2023→2024」で紹介された本です。1ゲーム目。オンライン開催。 2023.12.31
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まず『リヴァイアサン』の構成について先に述べておくと、現代日本で(特に政治学の分野で)取り上げられることが最も多い、ホッブズの国家に関する議論は、第1巻ではまだほとんど展開されない。 第1巻の多くでは、それぞれの言葉の定義など議論の諸前提について述べられているのみだ。 第1巻の終...
まず『リヴァイアサン』の構成について先に述べておくと、現代日本で(特に政治学の分野で)取り上げられることが最も多い、ホッブズの国家に関する議論は、第1巻ではまだほとんど展開されない。 第1巻の多くでは、それぞれの言葉の定義など議論の諸前提について述べられているのみだ。 第1巻の終わりで自然法について語られ、そして第2巻に入って主題が展開される。 その後第3巻以降でキリスト教との関係について語られる。 したがって、正直に言えば、この第1巻の内容はそれほど面白いものではない。 ホッブズの国家に関する主張をかいつまんで知りたい方は、第1巻は飛ばして第2巻だけ読むのでも良いだろう。 しかし、第2巻で述べられていることを細かく吟味していくには、彼が何を言わんとしているのかをよく検討する必要が生じる。 そのため、彼が用いる言葉の定義をよく踏まえておく必要があるのだ。 その意味では、第1巻では、第2巻の伏線が張られていると考えていい。 第1巻で淡々と進められていく議論が、第2巻に入り大きく広がっていく。 まるで、彼がずっと心の奥で抱えていた主張が、第2巻に入ってから一気に爆発するかのようだ。 その「爆発」を楽しみたい人には、まだ静けさ漂うこの第1巻の最初から順に読み込んでいくことをおすすめする。
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君主は頭。元老院は心臓。財務官は胃腸。裁判官は目耳舌。兵士は武装した手。役人は武装していない手。農民は足。国家は身分秩序の下、共通の目的のために協働している。ソールズベリのジョン『ポリクラティクス』1159 唯一最高の普遍的な政治的権威・世界帝国が秩序を生む。ダンテ・アリギエー...
君主は頭。元老院は心臓。財務官は胃腸。裁判官は目耳舌。兵士は武装した手。役人は武装していない手。農民は足。国家は身分秩序の下、共通の目的のために協働している。ソールズベリのジョン『ポリクラティクス』1159 唯一最高の普遍的な政治的権威・世界帝国が秩序を生む。ダンテ・アリギエーリAlighieri『帝政論』1312 サン・バルテルミの虐殺(1572)。宗教による暴力が横行。悲惨。無秩序。秩序を取り戻すため、何者にも(ローマ教皇にも)依存従属しない主権者が必要だ。主権者は絶対であり、いかなる抵抗も許されない。▼主権者は臣民の同意なしに法律を作ることができる。主権とは何よりもまず立法権。主権者こそが法の源泉であり、主権者自身は法に服さない。ジャン・ボダンBodin『国家論』1576 人間は自分の生命を保存・発展させる権利(自己保存の権利)をもつ。人間は他人と自分を比べ「もっと、もっと」と自分の利益を追求し続ける。 ▼しかし富は有限なので、パイを奪い合うことに。個人はばらばらに自分の目的を追求している。無秩序で、孤独で、貧しく、卑劣で、残酷で、皆がお互いに戦争状態。悲惨。▼そこで、人々は自分の生命を保存・発展させる権利を放棄して、国家を作る。私も放棄するから、君も放棄してくれ。国家に全権委任。絶対権力下での平和・秩序が達せられる。ルールを破る人間には国家権力(主権者)が刑罰を与える。その力がないと社会は成り立たない。剣なき法律は、ただの紙切れにすぎない。国家が怪物リヴァイアサンになるのもやむを得ない。権力は必要悪。▼法は国家の主体(主権者)の命令であり、主権者が自由に改変でき、主権者自身を拘束しない。ただし主権者自身も神の僕なので、自然法を遵守することを義務付けられる(21章)。臣民の自由は臣民それぞれの私生活など主権の及ばない(法によって不問に付されている)範囲に限られる。トーマス・ホッブズHobbes『リヴァイアサン』1651 〇自然権。各人がそなえている自由。自らの裁量・理性に照らして最適なことをやる自由(14章)。 〇自然法。理性によって発見された普遍的な行動規範。例えば、人の生命を害したり、生存の手立てを奪い取ることは禁じられている。人の生命の維持に役立つと分かっていながらそれを怠ること(不作為)も禁じられている(14章)。 〇共通の権力がないところに法はない。法がないところに不正はない。人間の欲望や情動はそれ自体としては罪にならない。情動を動機とする行為もそれを禁ずる法律がない限り犯罪にはならない(13章)。 〇あなたは就寝するときに、ドアを施錠しないだろうか(13章)。 教皇(カトリック教会)の権威を再認識し、教皇が各国の君主の主権濫用を監視すべき。ド・メストルde Maistre『教皇論』1819 主権者は法を超えた決断をする。主権者とは例外状態に関して決定を下すものである。主権者はどういう状況が極度の急迫状況であるか決定し、これを除去するために何をなすべきかを決定する。主権は教皇がもっていた権力が世俗化したもの。カール・シュミットSchmitt『政治神学』1922
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句点が多かったり言い回しが難しかったりで私には少し読みにくかったけど、ホッブズの考える人間の本性や様々な定義付けなどの大きな前フリの後で自然状態や自然権、自然法についての展開が始まっていくので、現代社会で習ったホッブズの思想がより深く理解出来て面白かったです。 ホッブズさんの考え...
句点が多かったり言い回しが難しかったりで私には少し読みにくかったけど、ホッブズの考える人間の本性や様々な定義付けなどの大きな前フリの後で自然状態や自然権、自然法についての展開が始まっていくので、現代社会で習ったホッブズの思想がより深く理解出来て面白かったです。 ホッブズさんの考えには私も大いに賛成できるなあと思いました。私の脳みそではあまりにも理解がスムーズではなかったので前半部分は途中で気が遠くなりましたが、後半の自然法について述べられている所は自分の考えに近かったのでスムーズに読み進められました。 ぜひ続きも読んでみたいです。
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ホッブズは、まず人間の思考のあり方を明確化し、様々な言葉を定義している。その後、人間の自己保存という観点から自然法を再定義している。自然状態が「各人の各人に対する戦争」状態であるため、この状態を脱却するために理性と主権的力が不可欠という形で社会契約へと議論が展開している。随所にス...
ホッブズは、まず人間の思考のあり方を明確化し、様々な言葉を定義している。その後、人間の自己保存という観点から自然法を再定義している。自然状態が「各人の各人に対する戦争」状態であるため、この状態を脱却するために理性と主権的力が不可欠という形で社会契約へと議論が展開している。随所にスコラ的理解への批判が散りばめられており、彼の議論は、この第一部だけを読むならば、無神論者と思われても仕方ないほどに「科学的」な印象を与えるだろう。
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第1部の第12章までは、認識論、意味論、価値論など当時の哲学のおさらいのような内容になっている。いわゆる「ホッブズ的」な政治思想、社会契約説が本格的に登場するのは、第13章に入ってからである。
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自然法(社会を維持するための法=道徳) 1.平和のためなら何をしてもいい 2.平和と自己防衛のためなら全ての権利を捨てるべき 3.むすんだ信約は履行すべき 4.他人から恩恵を受けた人はその善意にそむかぬよう努力すべき 5.各人は他の人たちに順応するよう努力すべき 6.罪を償うもの...
自然法(社会を維持するための法=道徳) 1.平和のためなら何をしてもいい 2.平和と自己防衛のためなら全ての権利を捨てるべき 3.むすんだ信約は履行すべき 4.他人から恩恵を受けた人はその善意にそむかぬよう努力すべき 5.各人は他の人たちに順応するよう努力すべき 6.罪を償うものを許容すべき 7.復讐する際はこれからくる善の大きさに注目すべき 8.相手に憎悪・軽蔑を表明しないこと 9.他人を平等なものとして認めること 10.他人が欲しがっている権利を自分が保留しないこと 11.人々を裁くときは平等に扱うこと 12.分割できないものは共同で持つこと 13.分割できずかつ共同でもてないものは、所有者をくじで決める 14.長子を優先してもよい 15.仲介者は安全であること 16.仲裁者の判断に服従すること 17.自分の裁判の仲裁者にはなり得ない 18.仲裁により利益を得るものは仲裁者になり得ない 19.証人を信用すること
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ホッブズの目的は、自然状態=戦争状態の脱却にある。 そこでの自然状態とは、ルールのない状態という理解であって、18世紀以降なされるような文化人類学的な批判はもしかすると妥当ではないかもしれない。 この自然状態からの脱却は、1つのルールによって遂行される――コモンウェルスの設立。...
ホッブズの目的は、自然状態=戦争状態の脱却にある。 そこでの自然状態とは、ルールのない状態という理解であって、18世紀以降なされるような文化人類学的な批判はもしかすると妥当ではないかもしれない。 この自然状態からの脱却は、1つのルールによって遂行される――コモンウェルスの設立。 ここでホッブズが注意しつづけるのは、いかにして自然状態に戻らないように、このコモンウェルスを維持できるか、ということ。 絶対的主権者を立てることで、それを行うが、 抵抗権や、三権分立などはない。 そのような古めかしさをも持っている17世紀のこの哲学書の功績は、 臣民の立場から見れば、市民的自由がいかなる前提によって成り立ちうるのか、ということを示したことにあるように思われる。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ようやく1巻を読み終わった、という感じ。わざとなのか、ひらがな表記が多くて非常に読みづらい。 大半が言葉の定義についての説明。最後にようやく出てきた「自然状態」については非常に興味深くて一気に読み進められた。ここからどのように展開していくのか興味しんしん。やはり、内容の解説を聴くのと、実物を実際に自分で読むのとでは理解度はまったく違ってくると思えた。
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