ポスト覇権システムと日本の選択 の商品レビュー
1980年代に書かれた著者の文章を集めた本で、前半ではアメリカの覇権が終わり新たな時代が到来するという認識を示し、後半ではそうした来たるべき国際社会において日本および日本人がなすべき役割について、主としてエッセイ形式で語っています。 アメリカの覇権に依拠した国際秩序は、覇権国が...
1980年代に書かれた著者の文章を集めた本で、前半ではアメリカの覇権が終わり新たな時代が到来するという認識を示し、後半ではそうした来たるべき国際社会において日本および日本人がなすべき役割について、主としてエッセイ形式で語っています。 アメリカの覇権に依拠した国際秩序は、覇権国がそのコストを支えきれなくなることによって崩壊すると著者は論じています。そのうえで、覇権システムからポスト覇権システムへのソフト・ランディングを成功させるためには、新たな国際秩序のありかたについての認識が求められるといい、「パックス・アメリカーナ」に代わる「パックス・コンソルティス」(コンソーシアムによる国際秩序)あるいは「パックス・ディプロマティカ」(外交による国際秩序)という描像を提出しています。 また著者は、国際社会の関係は、19世紀においてはテリトリアル・ゲーム、20世紀においてはウェルス・ゲームとして解釈できるといい、21世紀においては「アメニティ」(快適さ)が重要な指標になってくると主張し、そうした社会に向けて日本人がなすべきことを考察しています。 本書刊行当時から現在にいたるまで、アメリカの威信が低下したといわれつづけていますが、旧来のパワー・バランスの理論を越えるような新しい国際秩序のヴィジョンはいまだ示されておらず、それどころかそうしたヴィジョンを示そうとする努力を冷笑で迎えるような風潮さえあるような気がしてなりません。
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