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十字架を刻む男 の商品レビュー

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2019/06/04

1989年発表のサイコスリラー。主人公は、元ニューヨーク市警刑事ピーター・スタインで、コンピュータを用いた犯罪の統計と分析、犯人像を割り出す会社を立ち上げ、警察に協力している。この設定自体は、現代ではもはや成立しえないだろう。 銃殺した被害者を荒野に放置する連続殺人がラスベガス...

1989年発表のサイコスリラー。主人公は、元ニューヨーク市警刑事ピーター・スタインで、コンピュータを用いた犯罪の統計と分析、犯人像を割り出す会社を立ち上げ、警察に協力している。この設定自体は、現代ではもはや成立しえないだろう。 銃殺した被害者を荒野に放置する連続殺人がラスベガスで発生する。死体には、大きく十文字が切り刻まれていた。殺人犯の名はデズモンド。狂信的なキリスト教信者で、自らは救世主であり、死者を蘇生させる力を備えていると妄信していた。全ては「神の啓示」だった。その基点は、少年時に遡る、刑事スタインとの或るエピソードにあった。 デズモンドは、誘拐した少女を人質にして「使命を果たすためにラスベガスへ来い」というメッセージをスタインに送る。元刑事は記憶を探るが、殺人者に思い当たる節が無かった。スタインを「神の代理人」の如くに扱うデズモンド。二人の過去を結ぶ接点、そして「果たす使命」とは何か。衝動的に殺人を繰り返していたデズモンドは、遂にはメディアを通じて奇跡を誇示しようと試みる。 残念ながら筆力が無いため、場面が凡庸に流れ、スリルが生まれない。没個性の主人公はともかく、メインのサイコキラーの造形が浅い。緻密な心理戦を通して〝闇〟を掘り下げることもなく、刑事との距離が最後まで縮まることなく物語は終わる。 トマス・ハリス「羊たちの沈黙」が爆発的に売れて以降、数多のエピゴーネンが氾濫し、飜訳された。一時は大半が〝精神異常犯罪物〟ではないかと感じたほどだった。「所詮は二番煎じ」という評価とならないために、作家らは知恵を絞っていたようだが、そうそうインパクトのある作品が生まれるはずもない。かといって、狂気や残虐性の度を高めただけでは、無為なるサディズム志向に陥るだけである。その適例がケッチャム「隣の家の少女」なのだが、異常性のみに焦点を当てたストーリーは、娯楽性皆無の異端まで行き着いてしまうことを証明している。 本作のプロットは、いつかどこかで読んだ記憶のあるものばかりで、プラスアルファが無いのは致命的。サイコスリラーならば、「狂気」のひと言で何でも説明が付く……では、ノンフィクションを読んだ方がましだ。

Posted byブクログ

2010/03/14

殺人者デズモンドの生い立ち(および母親からの虐待)にはぞっとするものがあるが、いかんせん類型的。設定としては似ている『レッド・ドラゴン』の悲しさには、遠く及ばず。ラスト、スタインの妻カレンと息子のバーニーがデズモンドと渡り合うところなどは、映画になりそう。

Posted byブクログ