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魔術師(下) の商品レビュー

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主人公が思いをよせた…

主人公が思いをよせた彼女とハッピーエンドになると思いきや・・・会う人すべてに対して疑ってしまうようになる主人公がなんだかかわいそうです。

文庫OFF

2010/06/09

 愛を信じない利己的なイギリス青年という主人公を使って、人間の自我や愛情や関係性などを私たちに掲示する物語である。青年が大掛かりな仕組まれた経験によって成長するという話でもある。だから主人公の人柄(性格)は『?』と思うような人格に在る。  読み始め、第一部。主人公の人柄がどうも気...

 愛を信じない利己的なイギリス青年という主人公を使って、人間の自我や愛情や関係性などを私たちに掲示する物語である。青年が大掛かりな仕組まれた経験によって成長するという話でもある。だから主人公の人柄(性格)は『?』と思うような人格に在る。  読み始め、第一部。主人公の人柄がどうも気に入らなかった。話の展開も全く分からず、ただ読み進める。言葉遣いや語尾が少々気になりぼちぼちと読んでいく。  第二部になって、場所がイギリスからギリシャに変わり物語が進み始め怒濤のように展開し出す。どうなっていくのだろうという興味からずんずんと読み進める。この小説の中心部。とにかく面白い。第二部が終わる時には自分の現実についても自信が持てなくなる。  第三部でこれまでの謎が解明され、”そういう話だったのか" と至る。  すごく面白いし、読みやすいし、よく出来た作品だと思う。本当に素晴しい。その想像力、その発想力、その構成力に驚愕させられる。  ギリシャ神話やシェイクスピアやその他の海外文学に疎い私は幾度も言葉を調べるハメになったが(例えば「シジフォス的に取り組む」とか「女神デメテル」とかに引っ掛かって調べる)、そういった言葉はむしろ作品の舞台としてのギリシャの島や物語の内容を感じるに必要不可欠なものであり、知らない私がいけない。博識な人の方がこの作品の良さをもっと感じられると思う。  それから、絵や音楽、神話と詩、ギリシャ語などの外国語、歴史、自然、そういうものをとても効果的に使っていることが印象的だった。イギリス的、ギリシャ的、ドイツ的、フランス的、そういうものの使い分けも効いていた。  とにもかくにも、隅々まで余すことなく作り込まれた素晴しい作品である。

Posted byブクログ