御堂筋ものがたり の商品レビュー
タイトルから小説を想像すると全く違う。御堂筋を中心とした大阪そのものの歴史、文化を、明治・大正・昭和初期を中心に、そして豊臣・徳川時代に遡って幅広く語ってくれる。著者の大阪の街に対する強い情熱を感じた。現在の御堂筋の誕生が第7代・関一市長の都市設計の理想から生まれたことは有名だ...
タイトルから小説を想像すると全く違う。御堂筋を中心とした大阪そのものの歴史、文化を、明治・大正・昭和初期を中心に、そして豊臣・徳川時代に遡って幅広く語ってくれる。著者の大阪の街に対する強い情熱を感じた。現在の御堂筋の誕生が第7代・関一市長の都市設計の理想から生まれたことは有名だが、前市長の池上四郎が東京高商(現一橋大)の都市哲学の学者を招いたとものだそうだ。そして1926年、当時東京を上回る日本一の大都市である大阪の顔になる大道路御堂筋の建設が始まり、1937年に完成したようだが、この時代の経済恐慌などを考えると大変な出費を伴うプロジェクトだったと思う。そして物語りは徳川時代に遡り、名前を残した豪商たち(淀屋堂安)、歌舞伎役者、近松、西鶴、そして大阪市内のいろんな地名の由来まで、大阪を知る者にとっては興味深い話しばかりだった。それは明治時代以降の商人たち・企業の紹介へ続く。1899年に誕生した阪神電鉄の社名が何と「神阪電気鉄道」だった!びっくり。終章の近松・西鶴の現実家であることの説明は目から鱗。近松は心中讃美者ではなく、鎮魂のものだった。カネのゆえに死んでいかざるを得なかった男女であることを見透かした現実主義者だったとのこと。まして西鶴は金銭が明確に書かれているのだそうだ。話しは落語、歌舞伎、絵画まで及び奥深い本だと、著者に興味を感じた。
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