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2012/09/05

第二次大戦中~後のブラジルで起こった日系移民のいわゆる「勝ち組」「負け組」の対立抗争を、その渦中でたまたま現地に居合わせた作者が、残存する資料と取材から詳細に追ったノンフィクション。作者の関わりが時系列的に出来過ぎの感もあり、ホントにこんな感じだったのかと疑念を抱かないでもない。...

第二次大戦中~後のブラジルで起こった日系移民のいわゆる「勝ち組」「負け組」の対立抗争を、その渦中でたまたま現地に居合わせた作者が、残存する資料と取材から詳細に追ったノンフィクション。作者の関わりが時系列的に出来過ぎの感もあり、ホントにこんな感じだったのかと疑念を抱かないでもない。しかし「勝ち組」「負け組」という言葉は聞いたことがあっても、詳しいことを全く知らなかったので非常に参考になった。こんなに大規模で長期に渡る恐ろしい事件だったとは。驚くことばかりだった。 扇谷正造が巻末解説でこんなことが起こった理由を三つ挙げている。 1)明治以来の皇国教育 2)閉鎖された環境と情報の遮断 3)人は耳当たりのいい話を優先的に信じる 概ね同感。ただしその状況の前提となるのは当事者が抱える「不満」ではないか。精神的・肉体的・経済的 etc.に満たされていない状態、困窮、というのが極端な価値観に飛びつく心理を用意する。これを第4の要因として挙げておきたい。 自らの価値観を絶対視して排他的な行動に出るといった事例は人間の行動として珍しいことではない。故にこのような「狂信」は現代日本とも無縁ではない。このような歴史があったことを思い返し、そこから今を見つめ直す作業は常に意識して行うべきであると思う。

Posted byブクログ