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復讐者の帰還 の商品レビュー

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真犯人を突き止めてそ…

真犯人を突き止めてその命を奪うべく、シェインは雨と霧に煙る街で捜査を開始する。が、行手には恐るべき奸計が待ち受けていた。冒険小説の第一人者が放つ秀逸なサスペンス。

文庫OFF

2020/08/25

ヒギンズの翻訳作品中では、最も初期にあたる1962年発表作。サスペンスを基調とした小品ながら、ハードボイルドタッチで硬派な世界を創り上げている。スタイリッシュな好編だ。 1958年、英国の街バーナム。土砂降りの雨の中、路地裏で気を失っていた男が、悪夢から目覚めた。傷だらけの全身...

ヒギンズの翻訳作品中では、最も初期にあたる1962年発表作。サスペンスを基調とした小品ながら、ハードボイルドタッチで硬派な世界を創り上げている。スタイリッシュな好編だ。 1958年、英国の街バーナム。土砂降りの雨の中、路地裏で気を失っていた男が、悪夢から目覚めた。傷だらけの全身、両手には手錠。教会へと逃れ、旧知の神父と再会した男は、これまでの道程を回想する。 元英国軍兵士マーティン・シェイン。朝鮮戦争で頭部に重傷を負い、7年にわたり入院、ようやく記憶を取り戻したばかりだった。この街には、かつて共に中国軍に捕われていた戦場の仲間が暮らしていた。その中に、友人サイモン・フォークナー銃殺に関与し、シェインを地獄へと突き落とした裏切り者がいた。それが誰かを突き止め、復讐を果たす。そのための〝帰還〟だった。 時間は限られていた。シェインは今現在も進行性の記憶喪失症を抱え、間もなく手術を受けることになっていた。成功率も生存率も極めて低く、この僅かな機会を無駄にはできない。復讐者は、新たな生活を送っていた男達を訪ね歩く。遺産を継ぎ悠々自適の資産家、怪しい噂の絶えないクラブ経営者、殺気を漂わせたバーテンダー、そして生真面目だが考えの読み取れぬ考古学者。北側へ情報を売り渡した奴は誰か。 戦死したはずのシェイン。彼らは一様に驚いたのち、頑なに口を閉ざした。フォークナーの妹ローラに、サイモンの死は仲間の裏切りが原因だと告げるが、反応は鈍い。やがてローラを含め、シェインと接触した者が、それぞれに不可解な行動を取り始めた。誰と誰が、何を目的に繋がっているのか。隠された事実を探るシェインは、逆に罠を仕掛けられていることに気付く。 冒頭の教会でのシーンへと戻るのは終盤になってから。予想外の真相を掴んだ主人公は、厳然と報復の場へと赴く。 シェインはタフだが、榴霰弾を受けた際の破片が頭部に残っており、常に強烈な頭痛と記憶障害に悩まされている。現実と妄想の間を彷徨う後遺症を抱えた男の眼を通した情景自体が、ミスディレクションとなり、読み手を翻弄する。本作は、ミステリの技法を生かしてプロットに捻りを加えたヒギンズとしては異色作なのだが、当時からすでに優れた技倆を備えていたことが分かる。 現在90歳を越えたヒギンズは、本作発表時点では、まだ三十代前半の若さ。教師を続けながら1959年に作家デビューし、数々のペンネームを使って冒険小説を書きまくっていた時代だ。畢生の大作「鷲は舞い降りた」(1975)が大ベストセラーとなり、過去作品も含めて相次いで翻訳されたのだが、その殆どは絶版となり、今では新刊の紹介もなく、話題にすら上らない。特に初期作品は習作として軽視されているようだが、ヒギンズの魅力は本作でも充分味わえる。

Posted byブクログ

2015/10/11

朝鮮戦争で記憶をなくした男が七年ぶりに記憶を取り戻し、親友を死に追いやった裏切者を探し始める。候補は四人。主人公は脳に傷害を負い、余命一ヶ月か成功率1%の手術をするしかない。時々激しい頭痛に襲われ、幻覚を見たような気になる。挙句、殺人犯として警察に追われる身になる。幻覚なのか、裏...

朝鮮戦争で記憶をなくした男が七年ぶりに記憶を取り戻し、親友を死に追いやった裏切者を探し始める。候補は四人。主人公は脳に傷害を負い、余命一ヶ月か成功率1%の手術をするしかない。時々激しい頭痛に襲われ、幻覚を見たような気になる。挙句、殺人犯として警察に追われる身になる。幻覚なのか、裏切者は誰か、殺人犯は誰か… 最後まで真相がわからない。

Posted byブクログ