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テクノデタント の商品レビュー

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2010/08/17

この前に薬師寺泰蔵氏は、『テクノヘゲモニー』という本を出している。 これは技術力によって覇権は形成されるも、技術が人の移動と共にエミュレートされてしまうため、覇権は推移していくことを描いた一冊だ。 では『テクノデタント』はそういう関連の話かと思ったら、少しテクノデタントというその...

この前に薬師寺泰蔵氏は、『テクノヘゲモニー』という本を出している。 これは技術力によって覇権は形成されるも、技術が人の移動と共にエミュレートされてしまうため、覇権は推移していくことを描いた一冊だ。 では『テクノデタント』はそういう関連の話かと思ったら、少しテクノデタントというその用語法は、使い方が違った。 前書が技術→政治の連関について叙述したものとすると、本書は政治→技術の連関についてである。換言すると、各国の政策は、どう技術に影響するかについての本である。 但し、『テクノデタント』という名前が表現する通りに、技術競争とそのデタントが主眼となる。当時は日米の貿易摩擦が熾烈を極めており、この問題への解決策としての、デタント(緊張緩和)をここでは主張するのであり、20世紀の技術競争が政治からどう影響を受けたのかが記述の主な射程である。 とは言え、そこは『テクノヘゲモニー』を書いた薬師寺泰蔵氏、バルカンの歴史やロシアの歴史、ポーランドとの国境の問題とか、1000年以上も前からその影響を描く。いま僕は頑張って、頭の中で本書をまとめようと努力しているが、その掴みどころのなさに、絶望する。 ただここで一つのキーワードである、「アルタン・オルド」という自治方法については憶えておく必要がある。 そして本の半分くらいから漸く、政治→技術の議論が出てくる。米ソの冷戦に応じて両国ともにその軍事技術を競争したのであり、民生技術を圧迫してでもお互いしのぎを削った。 米ソともに、軍事技術の発展を目標の第一としており、民生技術については、アメリカではそれをスピンオフさせることで、またソ連では東欧に任せることでなんとかしようとした。しかし西側では日本やドイツが成長を遂げ、東側では石油危機と共にソ連が東欧への石油輸出を減らしたことで、限界を迎えていたらしい。 そうして次に冷戦に勝利したアメリカが、今度はどのように覇権を握ろうとしているかについて、湾岸戦争を譬えに説明を始める。そこで参考にするのが、「アルタン・オルド」であり、アメリカ以外の国による民生とアメリカによる軍事である。しかし民生→軍事というスピンオンが充分にありえる時代において、日本の民生技術の圧倒は、そのアメリカの今までのコストを無駄にさせてしまうことに繋がり、日本脅威論にも繋がるのである。 そこで薬師寺氏は、技術が互いにエミュレートされる状況を提言する。それこそが、テクノデタントである。 非常に流れが掴みづらいが、頭の中がヒリヒリするほどの知的興奮を誘うというのは薬師寺氏の著作全体に漂う特徴だと思うが、これもまた、技術論にしても単なる技術論に終わらなく、愉快だ。 途中までの単なる世界史のまとめ、みたいなのが無ければ僕としてはもっと楽しかっただろうに。

Posted byブクログ