ラディカル・フェミニズム再興 の商品レビュー
セクシュアリティなどの個人的な領域における性支配の構造にメスを入れるラディカル・フェミニズムの意義などについて論じた、著者の論考が収録されています。 著者は、上野千鶴子に代表されるマルクス主義フェミニズムの果たした一定の役割を認めつつも、上野や小倉千加子、あるいは著者自身に代表...
セクシュアリティなどの個人的な領域における性支配の構造にメスを入れるラディカル・フェミニズムの意義などについて論じた、著者の論考が収録されています。 著者は、上野千鶴子に代表されるマルクス主義フェミニズムの果たした一定の役割を認めつつも、上野や小倉千加子、あるいは著者自身に代表されるような有名人化したフェミニストがメディアを通じて情報を発信し、そうした言説がフェミニズムについての理論的関心をもたない多くの人びとに届けられることの意義について、一歩引いた地点から考察を展開しています。巻末に収録されている著者と金井淑子へのインタビューも、同じような問題があつかわれています。 そのほか、セクシュアル・ハラスメントについて、主として男性の読者に向けて書かれた啓蒙的な文章なども収録されています。 本書で著者が言及している、肩ひじ張って男女平等を訴えるフェミニストというイメージは、過去のものになりつつあるような気もします。その一方で、フェミニズムやジェンダー論における理論の蓄積を吹き飛ばしてしまうようなバックラッシュが巻き起こったことも記憶にあたらしく、フェミニズムの内と外のあいだにはいまだに大きな齟齬があることも事実でしょう。その意味では、本書の問題提起はいまだアクチュアルな意義をうしなっていないようにも思います。
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