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魔法の庭 の商品レビュー

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2009/10/04

 カルヴィーノの初期短編集。このひとの創りだすイメージはほんとうにすごい。表題作の「魔法の庭」とか「蟹だらけの船」なんて「うわあ…」としか言いようがない。で、今挙げた作品はすごすぎて、あらすじを紹介できない。だから代わりに、別なやつを紹介させてもらう。  「菓子泥棒」という話を紹...

 カルヴィーノの初期短編集。このひとの創りだすイメージはほんとうにすごい。表題作の「魔法の庭」とか「蟹だらけの船」なんて「うわあ…」としか言いようがない。で、今挙げた作品はすごすぎて、あらすじを紹介できない。だから代わりに、別なやつを紹介させてもらう。  「菓子泥棒」という話を紹介しよう。これは若い泥棒がケーキ屋の金庫を襲う話だ。ところが時は戦時中、つまりお菓子が珍しい時代だ。そんなわけでこの泥棒はケーキを食べたくてしようがない。金庫よりもまずケーキ。ついついケーキに顔を埋めて食べまくってしまう。段々胸焼けしてくるんだけど、それでも食べずにはいられない。だってこんなにケーキがあるのなんて初めてなんだ。  と、まあこんな風に、ばかっぽい心理描写が続く。でもこれがカルヴィーノの魅力。ちょっとへんな事件に、ちょっとへんな気持ちがくっつく。物語はこうやって進んでいく。で、この変な感じを楽しんでると、あるとき突然「…ん?」と立ち止まってしまうものが生まれてくる。その「…ん?」の正体は読んでもらうしかない。きっと読んだときによって、生まれるものはちがうだろう。  これがカルヴィーノの短編だ。この「…ん?」を味合わせてくれる作家はなかなかいない。(けー)

Posted byブクログ