南方熊楠コレクション(第3巻) の商品レビュー
「性」のテーマで集められたアンソロジーだが、ふつうに民俗学/人類学の論文集である。 近親相姦、アナルセックス、ホモセクシュアルなどなど、性の博覧会的な本で、各国文献から渉猟された話が続々と出てくる。 意外にも熊楠は「こんな話はうんざりする」とか、春本はつまらないとか言っているし、...
「性」のテーマで集められたアンソロジーだが、ふつうに民俗学/人類学の論文集である。 近親相姦、アナルセックス、ホモセクシュアルなどなど、性の博覧会的な本で、各国文献から渉猟された話が続々と出てくる。 意外にも熊楠は「こんな話はうんざりする」とか、春本はつまらないとか言っているし、彼自身にどうやらホモっ気も何もないばかりか、40代で結婚するまで女と縁もなかったようで、どうやら「純粋な興味」から、こうした話を集めたらしい。 世の中には多種多様な「変態」さんたちがいるようだが、ごく「普通」な私も「異常」な話を好んで読んでいるので、学問的好奇心にせよ単なる野次馬根性にせよ、とにかく「好奇心」はパワーを秘めているのだ。行動や実際の生活様式と「好奇心」パワーとは、全然別の話なのかもしれない。 そういう「パワー」はやはり熊楠的なところと言ってよいのだろう。強靱なバイタリティの中にすべてを引き込み、おおらかでたくましい「コンテクスト」を作り上げている。 なお、相変わらず巻頭の解題で中沢新一氏が、自身のコンテクストに強引に結びつけた牽強付会な「解説」を展開しているが、気にしなくて良いと思う。
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