『水惑星』の誕生 の商品レビュー
地球は太陽系でも唯一の液体の水を持つ水惑星で、まあ広い宇宙のどこかには似たような天体もおそらくあるんだろうけど、自分で光る恒星と違って惑星は探しにくいし、少なくとも観測範囲ではそうそうみつかりゃあせんよというくらいの存在ではある。 そんな地球の水がどこから来たのかという話は、...
地球は太陽系でも唯一の液体の水を持つ水惑星で、まあ広い宇宙のどこかには似たような天体もおそらくあるんだろうけど、自分で光る恒星と違って惑星は探しにくいし、少なくとも観測範囲ではそうそうみつかりゃあせんよというくらいの存在ではある。 そんな地球の水がどこから来たのかという話は、一般的には46億年前に地球ができた頃、大量に降り注いだ彗星だか小惑星だかに含まれていて、気温と重力が程よかったためにその大気中にとどめられたという説が有力である。 本書はその説に真っ向から反旗を翻し、「水分は地球創造から現在に至るまで、絶え間なく降り注ぐ小彗星によってもたらされ続けている。その数は年間一千万個、一万年で海面を2~3センチ上昇させる水量」という説をぶち上げている。 この説は1980年代の提唱であって、ネットで調べるとどうやら現在では完全に否定されている模様。従来説の通り、地球の海ができた頃に水はすべて地球にあったらしい。 ともあれこの手の科学は日進月歩であって、子供の頃には常識だったことが今ではまったく違う様相を呈していることもあり(恐竜が毛むくじゃらだった説とか)、こんな四半世紀も前の学説というのがなかなか現在に通じることは少ないのだけど、こういう素っ頓狂な学説というものはそれだけ物議を醸したり、他の研究者に攻撃されたり、メディアに面白がられたりとドラマチックな部分が多いので読み物としてはなかなか捨てたものでもない。 興味深かったのは夜光雲の話で、一般的に雲は対流圏に発生し、どれだけ成長しても成層圏に入り込めないので、大きく育った積乱雲は対流圏と成層圏の境界(だいたい16km)で横方向に広がる「かなとこ雲」となる。 しかしこの夜光雲というのは成層圏よりもはるか上方の中間圏、高度約80kmで発生するのである。これがロケット打ち上げの後に観測されやすいということで、コアになる粒子が発生に関わっているだろうということで、先の宇宙から飛来する小彗星が夜光雲の発生源なのだと著者は訴えている。 これもまあ実際にはいろいろな条件でもって地表から吹き上げていった水が氷の雲を作るらしいのだが、なんかこう科学的な言葉でそられしい機序を解説されるとうーんそうかなあなんてついうっかり納得してしまうわけで、これは本件に限った話ではないなあと考えることしきり。 それだけ氷塊(本書で言う小彗星とはつまり百トン程度の氷の塊である)が頻繁に降り注ぐとなると、人工衛星など危なくて仕方ないような気もするけれども、そうした氷塊による破損の報を聞かないというあたりで、あれあれこれちょっとどうなん? みたいな注意は働くようにしたい(ここでの引っ掛かりが正しいかどうかはさておき)。
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