汝の父を敬え(下) の商品レビュー
禁酒法の時代にシチリア島からアメリカに渡り、富を築き、同郷の 人々からの信頼と尊敬を受け、26歳の若さでニューヨーク5代ファ ミリーのドンとなった父ジョゼフ・ボナンノ。 家を空けることの多かった父ではあったが、父と、父を訪ねて来る 男たちの世界に惹きつけられた息子ビル・...
禁酒法の時代にシチリア島からアメリカに渡り、富を築き、同郷の 人々からの信頼と尊敬を受け、26歳の若さでニューヨーク5代ファ ミリーのドンとなった父ジョゼフ・ボナンノ。 家を空けることの多かった父ではあったが、父と、父を訪ねて来る 男たちの世界に惹きつけられた息子ビル・ボナンノ。 ぱりっとした身なり、洗練された身のこなし、小指にはめた大粒の ダイヤの指輪。大学まで進み、一時は職業軍人や外交官になる ことも考えた。しかし、やはり父ボナンノの世界から抜け出すことは 出来なかった。 父への恐れと、同じくらいの尊敬と憧憬。それはいつしかビルを追い 詰めることになるとは知らずに。 FIBによるマフィア壊滅作戦はえげつない。ビルが相談役に就任した ことから始まったボナンノ・ファミリーの内部分裂に便乗して、関係者 の自宅や農場の爆破作戦を決行し、ファイミリー内部の疑心暗鬼を 煽ろうとする。 資産さえも政府に差し押さえられ、ビルのみならず羽振りの好かった マフィアたちも追い詰められて行く。一時代を築いたドンたちも、過去 の罪状や些細な罪で刑務所に収監され、往年の輝きは消え失せた。 父の世界に足を踏み入れたビルも他人名義のクレジットカードを使用 した詐欺容疑で裁判にかけられ、有罪を宣告される。 犯罪組織に身を置き、でっち上げの詐欺罪で有罪にされて刑期を務め ることとなっても、やはり自身の子供には父である自分を蔑まないで 欲しいを願うものなんだな。 映画化もされたマリオ・プーヅォ『ゴッドファーザー』が、マフィア全盛期 の「古き良き時代」へのノスタルジーであるのなら、本書は最盛期を過 ぎ凋落へ向かう時代のマフィア・ファミリーの物語である。 本書のタイトルはモーゼの十戒のひとつから取られている。 「汝の父母を敬え是は汝の神エホバの汝にたまふ所の地に汝の生命の 長からんためなり」 尚、ビルは後に父への思いを込めて『ゴッドファーザー伝説―ジョゼフ・ ボナーノ一代記』を出版している。 「著者の覚書」でゲイ・タリーズがいかにビルをはじめとしたボナンノ家の 人々との信頼を築き、本書の執筆にこぎつけたかが記されている。アメリ カのジャーナリストやノンフィクション作家のこういう根気や、執筆にかける 時間の長さや綿密な取材は、どの時代でも凄いと思うわ。 父ジョゼフ・ボナンノ、引退後はアリゾナ州ツーソンに住み、2002年5月11日 に心筋梗塞で死去。息子ビル・ボナンノ、11年の刑期を務めた後も保護観 察・仮釈放を繰り返し、2008年1月1日に75歳で死去した。 養子を含むビルの4人の子供たちは父を敬ったのだろか。
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上巻ほどではなかった。 盗聴テープを起こしたシーンが重要なのですが、伝聞が多くて理解できませんでした。 また、没落していく過程に面白みがなかった。クレジットカードの不正使用で実刑って。 小説ではないから仕方ないんですけど。
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