小説 横綱千代の富士 の商品レビュー

大下英治【著】

2017/04/28

とにかくその強さが際立って、今でも強く記憶に残っている横綱千代の富士。その後、貴乃花や、朝青龍、今まだ現役の白鵬など、強さの際立つ横綱は出てきているが、それ以前の横綱の中ではやはり飛びぬけて強かった印象が記憶に残っている。そんな千代の富士には、肩の脱臼癖があり、尋常じゃない筋トレでそれを克服した、という話だけはちょっと聞いたことはあった。しかし、この本を読んで、華やかな栄光の裏には、そんな一つのエピソードどころじゃない、壮絶な苦労とそれを乗り越える努力があったことを改めて知ることが出来た。
生い立ちから、相撲の世界に飛び込み、身体の小ささと怪我に悩まされながら横綱に出世し、さらに大記録を達成し、惜しまれつつ引退するまで、勝負への執着、怪我の苦しみ、後進への気配り、家族との絆、など、ふんだんなエピソードが淡々と書かれている。横綱の生き様がよくわかって面白かった。