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トマス・アクィナスの言語ゲーム の商品レビュー

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2018/01/28

トマス・アクィナスの神学について著者自身の解釈を提示した本だと思って手に取ったのですが、トマス神学についてはあまり立ち入った考察はおこなわれていません。著者の前著『保守主義の社会理論』(勁草書房)の続編といえるような内容です。 保守思想家の西部邁が、解釈学やウィトゲンシュタイン...

トマス・アクィナスの神学について著者自身の解釈を提示した本だと思って手に取ったのですが、トマス神学についてはあまり立ち入った考察はおこなわれていません。著者の前著『保守主義の社会理論』(勁草書房)の続編といえるような内容です。 保守思想家の西部邁が、解釈学やウィトゲンシュタインの「言語ゲーム」の発想を援用しつつ保守主義の理論的整備をおこなっていますが、著者の立場もおおむねそれに近いものと思われます。著者がトマスの思想として論じているのは、あらゆる存在者がそのようなものとして存在するためには、それらを限定する「存在」そのものが考えられなければならず、それが「無限」ないし「神」であるということに、ほぼ尽きています。近代に入ると、こうしたトマスの神学が世俗化され、一方では人間の「主体性」が、もう一方では近代国家の「主権」が、それぞれ現われることになるものの、「存在」そのものは何によっても限定されえずそれによってすべてのものが限定される何ものかであったように、「主体性」も「主権」もみずからを根拠づけることはできないと著者はいいます。 その結果、一方では自然科学的な知識がそれ自身のうちに根拠を求めることができず、地平依存的であることが知られるようになり、また他方では、ヨーロッパにおいて近代国家の主権を乗り越えるキリスト教ヨーロッパの復権の運動を生み出すことになります。 ポストモダン時代の保守思想の、ある意味では定型的なとらえ方だと思うのですが、すでに新鮮味はありませんし、そもそもタイトルから期待していた内容とは大きくへだたっていたので、個人的には期待はずれでした。

Posted byブクログ