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スカヤグリーグ(上) の商品レビュー

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2010/04/01

これは小説だが、かなり特殊な主題を扱ったものである。主人公が脳性マヒの人たちだからである。脳性マヒはふつう出産時の障害で生じ、筋のマヒがあるために、患者さんは言語がうまくあやつれず、周囲の人と意思の疎通が十分でない場合が多い。したがって、かつてはしばしば知能障害とされ、病院に放置...

これは小説だが、かなり特殊な主題を扱ったものである。主人公が脳性マヒの人たちだからである。脳性マヒはふつう出産時の障害で生じ、筋のマヒがあるために、患者さんは言語がうまくあやつれず、周囲の人と意思の疎通が十分でない場合が多い。したがって、かつてはしばしば知能障害とされ、病院に放置されることが多かった。この物語は、そのように放置された人々に伝えられ、そうした人たちに生きる希望を与える。スカヤリーグという、いわば伝説上の人物を主題としている。この人物にまつわる多くの挿話が、脳性マヒの人びとの間で語り継がれる。 この小説を読んでいると、小説ではなく、ほとんど実話ではないかと思える瞬間が、数多くある。著者自信の娘が脳性マヒだからであろう。脳性マヒという特殊な状況を設定し、一方では、言語が不自由であるために、不完全にしか伝えられない、正体不明の人物を追求するという、ファンタジーふうの物語を縦糸とし、脳性マヒの患者の言い方をきわめて現実的に語ることを横糸にしたこの長い物語は、不幸な人たちの夢と、そのいびしいg年実とを織り合わせて、きわめて感動的な物語を構成する。長編ではあるが、著者の筆力によって一気に読ませてしまう。障害児に関わる人たちだけではなく、一般に広く読まれてよい本である。

Posted byブクログ

2009/10/04

この書名で検索が掛けられることに感謝を。 この本に出会ったのは1991年。新刊書として朝日新聞の書評欄に出ていたもので、滅多にないことながら非常に興味を惹かれてしまい、記事の切抜きを持ち歩いて探し出したというもの。今はその文面もうろ覚えだが、とにかく人生についての考え方が変わった...

この書名で検索が掛けられることに感謝を。 この本に出会ったのは1991年。新刊書として朝日新聞の書評欄に出ていたもので、滅多にないことながら非常に興味を惹かれてしまい、記事の切抜きを持ち歩いて探し出したというもの。今はその文面もうろ覚えだが、とにかく人生についての考え方が変わったとか何だかとても大仰だったことは確かだ。 当時というのは温い大学生活が4年間も続くことに飽いている一方、成人として扱われることに、数年後には訪れるであろう社会人としての第一歩に不安やら期待やらを漠然と抱いていたのではないかと思う。 まあ、そんな期待めいたものを抱いて読んだのだが……確かに物凄い衝撃だったことは確かだ。お陰で、20年近く経った今も、人に紹介したい本としてこの本を選んでいるほどだから。 この本は、ある意味、岩でごつごつした山道を登ることに似ている。翻訳者が、これが初めての翻訳ということで信じられないほど読みにくい。しかも、そうでなくても、ファンタジーなのだかノンフィクション風なのだか分かりにくい構成を取っている。 主人公は脳性マヒで喋ることも書くことも、増してや見ることも出来ない少女で、彼女を忠実に助ける幼馴染みはダウン症の少年。伝説のように挿入される伝説の主人公もまた脳性マヒの青年で、時代遅れの施設に収監され、介護人たちに虐待を受けている。 そして、彼らを繋ぎ、彼らを導くツールは、なんとPC用のダンジョンRPGなのだ。 酷くたどたどしい翻訳にも関わらず、つむがれる物語はたくましく美しい。 健常たる者は、自分の立場と眼差しでしか世界を捉えられない。盲いた人々が何によって物を読み取るのかを失念したまま顧みることは難しい。 まだ20代の若い日に、蒙を啓いてくれたこの本にはその意味でとても感謝している。見えるものがこの世界の全てではないことを、お伽話ではなく教えてくれたこの本と出会えたことは、私にとってとても幸福なことだった。 願わくは、また何人かが同じこの道を歩まれんことを。岩山を上り越えて、愛の再生に立ち会えることを祈っています。

Posted byブクログ