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政治が悪いから世の中おもしろい の商品レビュー

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2012/05/14

ネロ、ヘロデ、始皇帝、煬帝、則天武后、ヒットラー、スターリン、田中角栄…大悪党の代名詞といえる統治者たちを「評価」するとは!これだけ見たらB級にすらなれない俗悪トンデモ評論と思われるだろう。ところがどっこい小室博士はちがうのだ。 小室直樹博士は、大学者である。経済学、社会学、心...

ネロ、ヘロデ、始皇帝、煬帝、則天武后、ヒットラー、スターリン、田中角栄…大悪党の代名詞といえる統治者たちを「評価」するとは!これだけ見たらB級にすらなれない俗悪トンデモ評論と思われるだろう。ところがどっこい小室博士はちがうのだ。 小室直樹博士は、大学者である。経済学、社会学、心理学、法学、歴史学などなどをマスターし、学際的研究を行った。ふざけているようにしか見えない一般向け著作も、読んでみれば、じつに至極全うなことが書いてあることが分かる。また、多くの弟子を育てた実績もある。社会学における「吉田学校」というべきか。 そんなすごい博士だとしても、承服しがたいことに違いはない。それももっともだ。ヒットラーやスターリンを認められるわけがない。だが、小室博士は評価している。なぜ?それは、「統治者」としては評価できるからだ。 第一次世界大戦の戦後賠償により、ハイパーインフレに陥ったドイツ。国民生活は完全に崩れてしまった。危機的状況のもとで行った、ヒットラーの「ケインズ的」経済政策が功を奏し、ドイツは見事復興した。スターリンもそうだ。五カ年計画の結果、ソ連は大国にのし上がった。などなど、彼らの政策のおかげで、国民経済は豊かになったのである。また、綱渡りとも言うべきヒットラーの外交政策は、もはや芸術的ともいえる。 つまり、"統治者"としての政治的義務"は"果たしたのである。だから、統治者として"は"評価できるのである(ホロコーストや大粛清については、ここでは別問題とする)。 ヒットラーやスターリンはおよそ例外的だ。ここまで賛否の「否」の面が大きいと、さすがに全肯定はできまい。だが、田中角栄の場合はどうだろうか? 小室博士が有名になったそもそもの原因は、田中角栄のロッキード裁判をめぐる討論でのハプニングだった(らしい)。お昼のワイドショーで、「5億円くらいなんだってンだ!ベラボウめ!」だなんて、例の小室節で言ってしまった上に、小沢遼子を足蹴にしたらしい。そりゃ変人扱いもされますよ…。 そんな濡れ衣(?)を着せられてまで評価する田中角栄。それはもちろん、「統治者」としての結果を肯定したためである。政治家は”外面”についてのみ責任を負うべきで、”内面”については無関係である。そして、その責任の最終的な判断は、国民によって、つまり選挙によって下されなければならない。だから、「ワイロだなんてとんでもない!田中は人間としてどうかしている!」といった批判はナンセンスなのだ。 例が古いのが残念だが、小室博士はすでに鬼籍に入られている。現在を分析するのは、自身の手で行わなければならないのである。

Posted byブクログ