月下美人 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
「逃亡」の主人公へのインタビュー、作品発表したことから始まった当人との不思議なお付き合い。戦争中・戦後の「軍からの逃亡」という命がけの体験をしたその人と著者の交流を通して、その当人の複雑な心の動きを書いた「月下美人」が圧倒的な迫力です。そして著者は特別な夜に「月下美人」の開花に遭遇します。その一日の中でも数時間しか開かない儚い花の美しさが人生そのものを感じさせます。翌朝の凋んだ花の描写が印象的です。それ以外も著者の私小説というべき短編集です。父の死と晩年の父に寄り添った女性の描写が度々出てきます。中年男性のさまざまな「死」の翳を感じさせる作品集が何とも暗い雰囲気です。
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