農業教育の課題 の商品レビュー
大学教育としての農学を端的に示した言説と、了解すべき先行研究を渉猟していたところ本書に出会った。そして、農学と農業教育の違いをまず確認した。ただ今日では著された時よりその意味の乖離が進行した印象を受けた。 第1章を担当した斎藤誠によれば、教育・試験研究・普及の3つを一元的に管理...
大学教育としての農学を端的に示した言説と、了解すべき先行研究を渉猟していたところ本書に出会った。そして、農学と農業教育の違いをまず確認した。ただ今日では著された時よりその意味の乖離が進行した印象を受けた。 第1章を担当した斎藤誠によれば、教育・試験研究・普及の3つを一元的に管理・運営した事例は、アメリカの州立の土地付与大学にあるという(p.4)。これは、1914 年に連邦議会で成立したスミス・レーバー法(Smith-Lever Act)に基づいて、それまでの別個に存在した学習機会を各州で有機的に体系化するようになり、その運営の中心に農学部が据えられた(佐々木2012 http://www.uejp.jp/pdf/journal_07/r03.pdf)、という状況とのことである。 『世界の農業教育』の研究会報告は興味深い。今日において、論文形式でこうした研究がないか確認したい。 ---------------------- 2014.9.7. 以下は、筑波大学農林技術センター 編2003『農学教育への道標』http://www.nourin.tsukuba.ac.jp/PDF/preface.pdf から抜書したもの。 i 農学の守備範囲が従来以上に多様化・複雑化・高度化しているといっても過言ではないでしょう。 p.7(クルチモースキー) 共生関係の初発的段階は物質的共生であり、この段階では人間―家畜―作物で構成する生態系内での物質の交換が主体をなしている。 p.10還元主義から全包括論的という科学のパラダイムシフトが必要であり、全体性であって、総合的、総括的、な科学としての農学の新たなる取り組みの必要性が見えてくる。 p.11しかし、近年の農学はあまりにも細分化され、分解的研究手法(実験科学手法)にその因果律の追求をゆだねたため、農業生産や環境問題など多要因の影響のもとに構成されている現象の改善には策の施しようがない弱点をさらけだしているといっても過言でない。 この他、第3・4章の分析は、重要な意義があると考える。
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