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彼岸過迄 の商品レビュー

3.7

21件のお客様レビュー

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2012/11/23

(1991.05.11読了)(1991.04.27購入) (「BOOK」データベースより) いくつかの短篇を連ねることで一篇の長篇を構成するという漱石年来の方法を具体化した作品。中心をなすのは須永と千代子の物語だが、ライヴァルの高木に対する須永の嫉妬の情念を漱石は比類ない深さに...

(1991.05.11読了)(1991.04.27購入) (「BOOK」データベースより) いくつかの短篇を連ねることで一篇の長篇を構成するという漱石年来の方法を具体化した作品。中心をなすのは須永と千代子の物語だが、ライヴァルの高木に対する須永の嫉妬の情念を漱石は比類ない深さにまで掘り下げることに成功している。 ☆夏目漱石さんの本(既読) 「三四郎」夏目漱石著、新潮文庫、1948.10.25 「それから」夏目漱石著、新潮文庫、1948.11.30 「門」夏目漱石著、新潮文庫、1948.11.25 「坊ちゃん」夏目漱石著、新潮文庫、1950.01.31 「明暗(上)」夏目漱石著、新潮文庫、1950.05.15 「明暗(下)」夏目漱石著、新潮文庫、1950.05.20 「虞美人草」夏目漱石著、新潮文庫、1951.10.25 「道草」夏目漱石著、新潮文庫、1951.11.28 「こころ」夏目漱石著、新潮文庫、1952.02.29 「倫敦塔・幻影の盾」夏目漱石著、新潮文庫、1952.07.10 「行人」夏目漱石著、新潮文庫、1952.. 「坑夫」夏目漱石著、角川文庫、1954.05.30 「草枕・二百十日」夏目漱石著、角川文庫、1955.08.10 「吾輩は猫である」夏目漱石著、旺文社文庫、1965.07.10

Posted byブクログ

2012/04/06
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「『彼岸過迄』というのは元日から始めて、彼岸過まで書く予定だから単にそう名づけたまでに過ぎない実は空しい標題である。」 そんな由来だったとは。漱石後期三部作、その一。 まず登場するのが敬太郎。冒険を夢見るロマンティストでありながら、実際は大学を出て職も見つからず汲々としている青年である。物語の前半はどちらかというと軽妙な筆致で、敬太郎を中心とする人間模様が描かれる。謎めいた隣人に探偵ごっこにと、読者を楽しませるようなエピソードが目立つ。 ところが後半になると雰囲気は一変する。敬太郎が主人公なのかとおもいきや、今度は彼の友人である須永の存在が物語の全面に出張ってくる。従妹の千代子との恋愛を通して須永の内面が赤裸々に吐露されるのだ。「須永の話」における彼の告白は痛々しいほどであり、『行人』の一郎に繋がる一本の道筋を予感させる。『人間の頭は思ったより堅固に出来ているもんですね、実は僕自身も怖くって堪らないんですが、不思議にまだ壊れません、この様子ならまだ当分は使えるでしょう 』須永に共感できる自分が怖くって堪らない。 須永の口から語られる終盤のシリアスな展開に思い切りのめり込んだだけに、振り返ってみると前半の滑稽味はどこか取ってつけたようなものに感じられる。新聞小説ということで色々事情もあったのかもしれないが、終わり方も幾分唐突に過ぎるのではないだろうか。 構成の点では少しまとまりに欠ける印象も受けたが、後期漱石作品を貫く主題は紛れも無く本書の中に息づいている。

Posted byブクログ

2011/09/17

仮に岩波文庫版で登録しました。 本当は、 生誕百年記念 夏目漱石全集第八巻 日本ブック・クラブ 昭和42年初版 昭和43年再版 です。

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2011/05/07

狂言回し的な主人公である敬太郎の周辺の人物たちを巡る作品。 同じ下宿の住人である森本、友人の須永、その叔父である、実業家の田川と、高等遊民の松本、そして、従妹の千代子。 話は、森本から始まり、田川と松本との接触、須永と千代子の関係、松本の話に終わる。 本作で最も中心を成すのは、...

狂言回し的な主人公である敬太郎の周辺の人物たちを巡る作品。 同じ下宿の住人である森本、友人の須永、その叔父である、実業家の田川と、高等遊民の松本、そして、従妹の千代子。 話は、森本から始まり、田川と松本との接触、須永と千代子の関係、松本の話に終わる。 本作で最も中心を成すのは、須永と千代子の話、補足的にそれにまつわる松本の話である。 「行人」の一郎同様、須永の苦悩は根本的に、千代子(それに拡大解釈すれば彼の母)を含めた女を介した、他人に対する「不可解」なのではないかと思う。 同時に、「行人」のレビュー・感想に記したごとく、自らにとっても、この「不可解」や、他者との交感、他人を受け入れる苦悩が重要な命題でもある。 ただ、一郎とは異なり須永の場合は、その苦悩の原因が、女=他者ではなく、須永=自分自身である。 一郎は妻お直を含めた他者を理解できないことに悩まされたが、須永は従妹の千代子によって、自らの持つ苦悶に気付かされ、苛まれれている。 個人的には、本作や「行人」のみならず、他の漱石作品に数多みられるこれらの煩悶に、はたして他人も悩まされているのかどうかと、つくづく思う。 ただそれは決して他人を軽んずるような意味なのではなく、他人を「不可解」に感じている自分にとっての大きな疑問でもあり、他者を理解や受け入れるとのできない、自らにとっては永遠の謎のようなものなのだと思う。 他人も顔に出さぬだけで同様に悩み苦しんでいるものなのかどうか、精神的な意味で他人に近しく接することのできない自分にとっては、おそらく一生分からないのではないかとも思う。 一方で、必ずしも苦悩と感じているかどうかは定かではないものの、この「不可解」という命題は、敬太郎を除くそれぞれの登場人物にも端々に感じ取れもする。 風来坊的な森本、どこか他人に心を許さない感のある田川、高等遊民を称して世間と隔絶した風のある松本、自ら期せずしてか須永を翻弄する従妹の千代子。 みんな、どこか他者への理解を拒絶し、どこか他人と打ち解けようとしていない感じすらある。 案外、他人もそのようなものなのかもしれないとも思う。 ちなみに本作も、10年以上前の学生のころに一度読んだのだが、今回「行人」の読後、改めて青空文庫のものを読んでみた。 さらに余談ながら、以前、「行人」を読んだ友人に、一郎からお前を連想した、と言われたことがある。 ただ、一郎ほどの英才でもないし、本作を読み返してみて、自分自身は、一郎よりもむしろ須永に近いような気もした。

Posted byブクログ

2011/03/20

モザイクが細かくなっていき、だんだんはっきりと画像が見えてくる感じ。 主人公は狂言回しに過ぎず、本当の主人公は須永なのだろう。 好きなのに好きとは云えず、裏の裏まで読んだ気になってしまう須永。 須永と千代子の物語は三部作のなかで形を変えて出てくるのだろうか。

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2009/10/04

病後の漱石が連載した小説。 主人公の友人須永の心の葛藤が 「こころ」につながっている気がした。 だから三部作なのか・・。

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2009/10/04

8月? 夏目漱石の後期三部作を読了。 敬太郎の目を通して、見える世界を中心に描いていく。 主人公が、聞いたことを書いている。 「こころ」の主人公と違って 積極的に、関わっていこうとするわけではない。 あくまでも、一定の距離を保ちつつ世間を垣間見ようとしていく。

Posted byブクログ

2009/10/04

『それから』を再熟読したいがために『三四郎』、『門』を手にしたときと同質の動機で、『こころ』を味わいためにここから始めた。所謂後期三部作の一作目である。 ぼくが漱石の作品に寄りかかるときの最大の理由は「文章」が持つ可能性の最高到達点を確認するためである。物語に身をゆだねるというよ...

『それから』を再熟読したいがために『三四郎』、『門』を手にしたときと同質の動機で、『こころ』を味わいためにここから始めた。所謂後期三部作の一作目である。 ぼくが漱石の作品に寄りかかるときの最大の理由は「文章」が持つ可能性の最高到達点を確認するためである。物語に身をゆだねるというよりも言葉の力を体感したいからである。 この作品は「嫉妬」の心理状況をわれわれ読者に露呈してくれる。重厚かつ深遠な文章だけでは到達しえない嫉妬心のリアリティは、軽薄かつ浅薄な人間の性質を知り尽くした漱石の業によってのみ文章化可能である、と敢えて断言させていただく。

Posted byブクログ

2009/10/04

学校を卒業したばかりの主人公敬太郎は、自分の職を探しながらも冒険に憧れていた。友人である須永に職の斡旋をしてもらい、結果的にその親族との交友を持つことになった。そして大人しい人間だと思っていた友人須永が実は結構な冒険話を抱えていたことを知る。この話を通じて、結局話を聞くだけに終わ...

学校を卒業したばかりの主人公敬太郎は、自分の職を探しながらも冒険に憧れていた。友人である須永に職の斡旋をしてもらい、結果的にその親族との交友を持つことになった。そして大人しい人間だと思っていた友人須永が実は結構な冒険話を抱えていたことを知る。この話を通じて、結局話を聞くだけに終わった敬太郎は、平凡である自分が歯がゆくもあり、また幸せであるとも思ったのだった。 最近、夏目漱石ばかり読んでいるので、この人の文体に慣れてしまったようです。しかし一人の人に絞ってその著作を読んでいくと、一冊目よりも幾冊か読んだ方がその理解がより深まると思います。しかし、私の心中は専ら明治時代にあります/(^o^)\ナンテコッタイ

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2009/10/07

冒険などのロマンが好きな敬太郎。職を得るため探偵めいたことをしてのち、やがて彼は友人・須永の深い内面世界の傍観者となる―――ってこんな感じでいいんだろうか。前半はイラン&失敗&構成がなってないっていう意見が昔からあるらしいが退屈な日常に漠然とした不満を持って何か起こらないかなと敬...

冒険などのロマンが好きな敬太郎。職を得るため探偵めいたことをしてのち、やがて彼は友人・須永の深い内面世界の傍観者となる―――ってこんな感じでいいんだろうか。前半はイラン&失敗&構成がなってないっていう意見が昔からあるらしいが退屈な日常に漠然とした不満を持って何か起こらないかなと敬太郎が思ってるのはいいなと思った。「雨の降る日」から急に面白くなり始めます。雨の降る日は漱石の実体験に基づいてるだけあってリアルで怖い。そのあとの「須永の話」須永と千代子の関係やエピソードに激しく燃えました、萌えました、悶えました。千代子可愛すぎる!!「嘘よ」のシーン可愛すぎる!ノックアウトされたあ!非常に密度の高い理詰めな文章がまたたまらんくってこれにも胸を締め付けられてました。はあ〜……後期三部作の幕開けですぞ!まだまだ内容的に暗くないから読むべき。

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